「彼等」(閑人亭日録)

 昨晩の雷雨と地震(神奈川県)を受けて、つりたくにこのマンガ『彼等』を『1968〔3〕漫画』筑摩書房二〇一八年五月一五日 初版第一刷発行で何度目かの再読。解説の中条省平「1968──〈破壊的性格の時代〉」から。

《 つりたくにこの『彼等』と楠勝平の『臨時ニュース』のラストで突然襲ってくる大地震や殺戮は、世界の滅亡を恐れると同時に希求するアンビヴァレントな時代の気分を生々しく映しだしています。
  また、つりたくにこの『彼等』には、この時代のマンガに特有の気分として、よるべなき〈青春の憂愁〉が群像劇の中で描きだされています。 》591頁

 本の帯の惹句後半。

《 多くの実験漫画は読者の世界観を、どこまでも過激な場所へと導いていった。漫画は世界を映していたのではない。漫画は世界を動かしていたのだ。 》

 もう一冊。『日本短編漫画傑作集 2』小学館 2021年7月5日 初版第1刷発行を開く。つりたくにこ『彼等』が掲載されている。帯の惹句。

《 東大紛争、パリ五月革命など、
  世界同時多発的な若者たちの叛乱で揺れた1968年から、
  日本万国博覧会が開かれた1970年頃までの作品を収録。》

 個々の作品についての突っ込んだ解説はない。
 『彼等』は、東京池袋駅西側=池袋駅立教大学、地下の喫茶店などが描かれている。懐かしい光景。『彼等』以降アヴァンギャルドな画風に変化していった。イタリア、ブラジル、カナダ(英語版)そしてスイス(フランス語版)から出版された作品集は、主に『彼等』以降のマンガ作品を論じているように思える。時代を超えて切実に共感するものがあるのだろう。私もそう思うのだが、彼女のマンガ作品について未だに語れない。すごく惹かれるのだが。すごく暑いのだが、冷え冷えする・・・(夏バテ)。
 パリは燃えている。ポンピドゥー・センターの「1964-2024 マンガ展』の反響はどうだろう。萌えているかな。
 https://www.centrepompidou.fr/en/program/calendar/event/9htHbj4