『人生を愛するには』(閑人亭日録)

 本棚で出合った中村真一郎『人生を愛するには』文藝春秋一九九五年四月一日 第一刷を少し読んだ。昨日の女性たちの笑い話は心底楽しかった。その影響でこの本が目に留まったのだろう。人生を愛するには。不覚にもそんな大事なことが思い浮かばなかった。「I 快適な生活様式の選び方について」「II 思想の一貫性について」を面白く読み、「III 老年の生き方について」で、ぐっと身近に迫って来る。以下書き留めておく。著者執筆時七十五歳。

《 一方で又、私が老年を自覚したきっかけは、年齢の変わり目の大病であったから、私のなかで病気の後遺症と老年の徴候とは混ざり合っていた。 》44頁

《 そういう習慣的な生を生きている者に、その死に関する意見を是非、聞いてみたい。相変わらず、死は他人にしか起こらないものだ、と中年までのような錯覚を持っている人間は、いくら楽天的な素質の者でも、七十歳を過ぎて、仲間の死が日常化してくるに及んでは、その境地に安住してはいられないであろうから。 》49頁

 午前十時前、雨が降らないうちに電車で三島駅前の眼科へ。定期検査。状態は少しずつ良くなっていると言われる。よかった。外は雨。気分は軽く帰宅。向かいの薬局へ。目薬の量はずいぶん減った。しかし、七十三歳。若い日とは違う。心は老化してなくても身体は老化してくるわ。いや、心も実は老化していることに気づかないだけ、かな。