百年後の美術史(閑人亭日録)

 昨日の引用、
《 文学史というものが、そういうものを中心にまとめられていったので、そうではないものは大衆文学として切り捨てちゃったんだね。 》
 は、文学史を美術史に置き換えても十分通用すると思う。これ以上は深く書かないが、私が評価し推している作家、特に味戸ケイコ、北一明、奥野淑子(きよこ、木口木版画家)、つりたくにこ(マンガ家)たちは、優れた作品を制作、創造しているのに、美術史からは外れているのか、殆ど取り上げられていない。K美術館で常設展示した味戸ケイコと北一明は、美術全集(小学館)、陶芸全集(京都書院)に収録されているが、現行の美術史からは外れている。つりたくにこはこの五年、イタリア、カナダ(増刷)、ブラジル、スイス(フランス語 上下二巻)から出版され、現代美術の殿堂、パリのポンピドゥー・センターから「マンガ、コミック 1964-2024」への出品依頼が夫の高橋氏へ届き、係員三人がフランスから来訪。三点を預けた。パリの日通から厳重に梱包された作品が無事届いたとの連絡。十一月まで展示。彼女の作品についての論評があるというが、フランス語じゃわからん。高橋氏は辞書を引き引き読んだという。喜んでいらした。話には続きがあるが、それは後日。
 1980年だったか、原宿の太田記念浮世絵美術館の河鍋暁斎展へ行った。戦前まではよく知られていたが、戦後忘れられてしまった、と嘆いている河鍋暁斎記念美術館の方の文章を読んだ。それが後年、大英博物館暁斎展が催され、一気に話題沸騰。五年ほど前の茅ヶ崎美術館の小原古邨展でも同様。うまく話題になれば人気爆発、商売繁盛。じつに優れた作品であっても、権威筋が話題にしないかぎり、美術史から外れ、評価もされない。逆にいえば、話題にさえなれば、評価もうなぎのぼり、作品の値段も騰がり、美術史にも載る、かも。百年後に書かれる日本美術史はどんなものになるだろう。それよりも、どの美術作品が高い評価を得るだろう。昭和・平成に書かれた美術史は通用するかな。
 太田記念美術館
 http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/
 河鍋暁斎記念美術館
 http://kyosai-museum.jp/hp/top.html