『現代の美術 art now2 幻想と人間』講談社1971年4月12日第1刷発行(第1回配本)を読んだ。編著・岡田隆彦。「はじめに」。
《 現代美術の描きだす〈幻想〉には、じつにさまざまなものがある。 》6頁
《 眼に見える現実とはおよそちがったものであることがわかっていても、思考と想像力のつくりだす幻想は抗しがたい魅力を失わない。しばしば、わたくしたちを呪縛する力をもっている。 》6頁
《 考える立場や姿勢はまちまちで必ずしも一様ではないが、現代美術は、イリュージョン(幻影)を、みごとに、しかも独特の現実感とともに表現しようともくろんできたとはいえるであろう。 》6頁
《 マス・メディアが発達した今日、虚像と実像はたがいに重なりあうことが多く、幻想の中身も一筋縄ではとらえきれない。そこに現代美術の〈幻想〉が多様に展開する別の理由もあるのである。 》6頁
章立て
1 ユートピアと世界の終末
2 存在の秘密にせまる
3 原型的な幻想の展開
4 エロスの地平
5 イメージの計略
6 現実の突然変異
奇妙を通り越して奇怪なあるいはおぞましいともいえる世界がこれでもか、と描かれている。夏バテ、老齢の私には無理。すーっと流し見て本を閉じる。この本から半世紀余。このような圧倒的な幻想絵画は、コンピュータによるヴァーチャル・リアリティの現在、描かれているのだろうか、とふと思う。この本が第1回配本とは、それだけ手描きの元気な時代だったのだろう。
収録された日本人画家は、大島哲以、河原温、工藤甲人、近藤弘明、中村宏、平山郁夫、山下菊二、横尾忠則。私も知っている画家たち。彼らの絵画は外国人に較べてどれもえらくおとなしい。