川端康成の小説『みづうみ』新潮社 昭和三十年四月十五日發行を読んだ。三十代半ばの、教え子の女生徒との不純異性交際で高校教師をクビになった男の、子ども時代から今までの女性への関わりが描かれている。関わりと書いたが、今でいうストーカー行為が描かれている。
《 一度をかした罪惡は人間の後をつけて來て罪惡を重ねさせる。惡習がさうだ。一度女の後をつけたことが銀平にまた女の後をつけさせる。水蟲のやうにしつつこい。つぎからつぎへひろがつて絶えない。今年の夏の水蟲が、いつたんをさまつても、來年の夏はまた出て來る。 》43頁
《 あの少女の見ごろは短いものと銀平には思はれた。ひらきかけたつぼみの氣高い匂ひなど、今の少女たちは學生といふほこりにまみれている。あの少女の美しさはなにに洗ひ淸められ、なにで内から光り出たのだらうか。 》172頁
《 うくわつに届け出られなかつた。 》60頁
《 久子と陰火をもやしてから、幸福は短く、轉落は早かつた。 》136頁
”うくわつに”と”陰火”は、初めて目にした。
『みづうみ』は中村真一郎が絶賛していたので読んでみた。毒気のある優れた小説作品だ。『雪国』や『山の音』よりも凄い。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BF%E3%81%A5%E3%81%86%E3%81%BF
朝、台風のような荒れ模様。窓を全部閉める。能登半島では豪雨、氾濫。気力が折れるだろうなあ。