『流れ酔い唄』(閑人亭日録)

 慌ただしかった一日が夕暮れを迎え、やっと一息つき、ふっと山崎ハコの歌声を無性に聴きたくなった。黄昏の空を眺めていて、A面二曲目の「罪」がふと浮かかんだ。
 LPレコード棚から『流れ酔い唄』キャニオン・レコード1978年を抜き出す。これを聴くのは今世紀初かも知れないほどに聴かなかった。が、心に深く刻まれている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E5%B4%8E%E3%83%8F%E3%82%B
 全十曲を貫く、揺れ揺れて深まっていくビートと歌声は、やはり山崎ハコ独自の世界をかたち作っている。タモリが彼女を「ネクラ」と揶揄したのは・・・残念だった。最近の薄っぺらな歌詞の早口歌がはびこっている時こそ、この山崎ハコの昭和の漆黒の夜の唄、というよりも暁闇の歌こそ、再発見、再評価されるべきだろう。
 https://www.youtube.com/watch?v=8jQ_4t8_ivY
 沼津市の公会堂での公演に行った。ギターが大きく見える小柄な体から迸る歌唱の深い情動は、私の心を震わせ、打ち抜いた。その時の感想を音楽雑誌に投稿。読者欄に掲載された。四十年あまり前のこと。いやあ深い。じつにいい。