『モンガイカンの美術館』四(閑人亭日録)

 南伸坊『モンガイカンの美術館』朝日文庫1997年5月1日 第1刷発行、昨日の「芸術はなんでもないものである」から少し引用。
《 要するに、コムズカシイことをいって、眉間にシワのいった人が電灯をいっぱいつけた真っ白けな画廊屋さんちで「芸術です」といって何かしているのを見せてもらわなくたって、自分勝手に、いろんなもんを見て感心したり、よろこんだりすればいいのだ! と決めてしまったのであります。
  こうゆう風に決めてしまうと、花瓶に花のいけたのを描いた絵やなんかも、素直に「気に入るか、入らないか」で見ることもできるようになるのであります。 》110頁
《 まァ、しかし、コンセプチュアル・アートつうもんも、ひとつの工夫ではあったんですよね、たしかに……。しかし、人様のやったことを同じように繰り返してるのは、ちょっとなんだと 思う。 》112頁
《 「面白いもんも、じきあきればつまんなくなるんだ」
   だから、この日々の精進ね。人のことはいえないけど「日々の精進」ですよ……。 》112頁

 「コップの底はバクハツだ!」
《 「岡本太郎は天才である」
   しかし私は岡本太郎の絵は好きではない。差別したからといって、おべんちゃらをつけ加える必要はない。好き嫌いは私の勝手である。岡本太郎はそれを描くことによって、芸術はかくあるべきだと主張することによって、あのもどかしげなしぐさより、もっともどかしいだろう内心を、少なからず鎮めているはずなのだから、ドッコイである。
  岡本太郎さんのサービスは、いくぶんリクツするほうに傾いているようで、やってしまったものより、いっていることのほうが面白い。
  いいたりなかった分をカンバスにぶちまけている絵は、私にはみんな一様に見える。「重工業」と題する絵に、なぜか元気そうな「おネギ」が登場していたのは面白かったのだが、あとはおおむね退屈なのだった。 》173頁

 岡本太郎の「太陽の塔」。私にはなにがいいのか、わからない。絵もさほど惹かれない。批評家としては一流と思うが、美術家としては・・・。ま、私的妄言。