南伸坊『モンガイカンの美術館』朝日文庫1997年5月1日 第1刷発行の再読を進める。
「マチスはNOWい」
《 マチスの絵はひと言でいって、急いでいる絵である。なるべくいらぬことをしないように、ズバリをなんとかひとつ、パッとこういきたい、モタモタしてては取り返しがつかない、と、こういうフンイキというものが押し出てきているのである。 》327頁
《 マチスは、なんだってこう急ぐのであろうか? 》327頁
《 「果物と酒瓶のある静物」という絵は、マチスの中では、比較的よく描かれた絵だけれども、「まるで写真で写したみたい」にキッチリ描くことを放棄している。
これはつまり、マチスがそのように描くことに耐えられないからに違いない。
「あ、これで描けた」
と思うと、そこでマチスはやめてしまうのである。
そこが、私は気に入ってしまった。 》329頁
《 細かいことにこだわる人にとって、マチスの絵は全部やりかけに見えるに違いない。いつも早めに切り上げている絵に見える。 》330頁
《 マチスには職人的才能はないのである。 》330頁
《 マチスはナマモノをあつかっているにである。 》330頁
《 絵具がムラに塗ってあって、切り紙のハサミのつかい方が下手だって、かまうこたァないのである。 》332頁
明日へつづく。
昨日の東京新聞を開く。11面「金曜訪問」は「QRコードを開発した囲碁愛好家 原昌宏さん(デンソーウェーブ主席技師)」。
《 情報の革新的な技術がIT業界でなく自動車業界生まれ、世界をあっと言わせた。 》
《 QRコードは特許権を行使せず、誰でも無償で使えるようにしたことで爆発的に広まった。その巧みな戦略も囲碁的な発想のたまものだ。 》
《 日本では古代から囲碁が親しまれてきた。プロのレベルも世界一だったが、90年代半ばから中国や韓国に遅れをとるように。「その頃を境に日本からクリエーティブな製品が生まれなくなった」と残念がる原さん。 》
《 「技術志向に走ったり、真面目すぎたりすると硬いものしか生まれない。何かを創り出すには遊び心が必要」とも。多少のキズやゆがみをものともしない”遊び”こそがQRコードの真価だとふに落ちた。 》