「名句入門」つづき

 春雨じゃ、濡れて参るか、と出たら止んでいた昼。 やれやれ。午後は傘をさしてグラウンドワーク三島の会合へ。近々、サウジアラビアから女性八人が視察に来ると、理事長。女性だけじゃダメで、夫や男親、子どももついてきて、計十八人に。世界は広い。

 永田耕衣『名句入門』永田書房1978年初版つづき。

《  切株があり愚直の斧があり  佐藤 鬼房  》

《 樹木の生を貴重と思う念と、その生をあえて断たしめた人間の斧とが、複雑な自嘲の心を育てる。「愚直」というほかいいようのないことが分る。重くるしい句であるが、どこかにユーモラスなヒューマニズムが瑞々しい香を放っている。 》 198頁

 「切株」といえば、加藤郁乎のこの俳句。

《  切株やあるくぎんなんぎんのよる  》

 「歩く銀杏銀の夜」とも読めるし、「ある苦吟難吟の夜」とも読める。

 「斧」といえばやはり加藤郁乎のこの俳句。

《  雨季来りなむ斧一振りの再会  》

 大岡信は『続 折々のうた岩波新書1981年初版にこの鑑賞を書いている。

《 通常の俳句とは違い、現前の景からの発想ではない。雨季の予感の中にひらめく斧の一振り。それが、何者かとの「再会」だという。相手は旧友か、古人か、また形なき精霊か。気迫を内に秘めた青春の句。 》

 「一振りは」当然、「一降り」に掛けてある。「斧」を「尾の」と読み替えると、「尾の一振り」となってまた別の興趣。

《  秋風や模様のちがふ皿二つ  原 石鼎  》

《 何もこのような当時の石鼎の生活環境を知らなくても充分おもしろい句で、蕪村的な普遍性に富む豪華な寂しさの充実した作品である。 》 240頁

 以前にも記した気がするけど、この句にはやはり照屋眞理子の短歌。

《  ヨカナーンの首もなければ古伊万里の皿はしづかに秋風を盛る  》

《  一滴もなき香水壜の強き匂ひ  内藤 吐天  》

《 香水の妖しげな魔力というか、そういうものに魅せられて、一瞬生死を超え、天与のセックス味を極めて美的に享受する人間の能力を、この一句は、積極的に発掘している。 》 106頁

 ここはつづけて照屋眞理子女史に出てもらう。女史との最初の出合の短歌。

《  <時の流れ(レーユ・デュ・タン)>終(つひ)の一滴馨りたち掌上軽し一壜の虚無  》

 こういう作品は幾度挙げても嬉しい。

 『名句入門』を一覧して思った。俳句は海から全天、宇宙まで詠んでいるけれども、地下と深海は目に触れない、現前の景ではないのか、管見では優れた作品が見当たらない。題材の大穴ではないか。観光は地面上の自然歴史遺産から地下地質(ジオパーク)と深海へ移っている。これからの吟行はそこだ。

 ネットの見聞。

《 半藤  これはちょっと生臭い話ですけど、尖閣の問題、あれを棚上げしたほうがいいという意見があります。私もそう思うんですけどね。それに対して、棚上げしたら結局は将来に問題を先送りすることになるじゃないかと反論する人がいる。でも、私は最近思っているんです。30年もたてば、世界には国境がなくなるのじゃないかと。
  宮崎  ああ、やっぱり。ぼくもそう思います。 》
 半藤一利宮崎駿半藤一利宮崎駿の 腰ぬけ愛国談義』文春ジブリ文庫

《 安倍首相よ、貴方がやるべきことは「日本を取り戻す」などという意味不明なことではない。「正気を取り戻す」ことだ。まともな国民は強くそれを望んでいる。 》

《 「真実の口」が国会の入口にあれば、ほとんどの議員は入れまい。 》

 ネットの拾いもの。

《 三河安城には新幹線は停まるが快速は停まらない。 》