2024-01-01から1年間の記事一覧

甘味処「銀月」(閑人亭日録)

昨日話題にした甘味処「銀月」についてドイツ文学者の種村季弘(すえひろ)氏がエッセイ集『晴浴雨浴日記』河出書房新社1989年3月28日初版発行に書いている。《 竹倉の富士山 某月某日 三島の修善寺線広小路駅前に、三島名物のうなぎ屋「桜家」がある。その…

死後の評価に委ねる(閑人亭日録)

昨日の身体の何ともぎこちない動きを見て、会長を離任する意向に納得されたのだろう。午後のうたたねの後、身体が楽になった昨晩、夕食を美味しくいただいた後、思わぬ疲れがどっと出た。十時間余り寝た。緊張感が緩むとはこんなことか、と我ながら驚いた。…

肩の荷が下りる(閑人亭日録)

午前十時、小雨の中、源兵衛川最下流部へ歩いていく。グラウンドワーク三島の専務理事、中郷(なかざと)用水組合の理事長らと合流。川を遡りながら、今年の作業(土砂の浚渫、雑草の駆除など)の手順を一つ一つ取り決める。終了後、専務理事に源兵衛川を愛…

ゆらぎの生動感(閑人亭日録)

味戸ケイコさんの絵、北一明の茶盌から「(ぐっと迫ってくる)訴求力がある」「(ぐっと惹き込まれる)奥の深い印象」としか表現できない感動を覚える。訴求力、奥の深い印象とは何とも曖昧だ。他に良い表現がないかと、無い知恵を絞って呻吟はしないが、午…

美しき魔モノ(閑人亭日録)

これからの美術品で心を魅了する作品、心を虜にする魔性の作品が現れるだろうか。美は破調にあり、ともいう。調和のとれた美術作品には感心はしても気紛れの風が吹く。心を揺さぶる作品は、破調、乱調を潜ませているだろう。すなわち歴史の正統性からの逸脱…

『第13巻 言語空間の探検』(閑人亭日録)

共同通信などが報道。《 冷泉家秘伝の箱130年ぶり開封 藤原定家の古今集注釈書発見 》 https://news.yahoo.co.jp/articles/417aecf9592ff7a3e9c7d06e9305c5c40a3311ce 昨日取りあげた『全集・現代文学の発見 第13巻 言語空間の探検』収録、安西均「新古今斷…

『全集・現代文学の発見』(閑人亭日録)

『全集・現代文学の発見』学藝書林刊の小さな新聞記事を読んで高校生の私は本屋へ走った。全十六巻のうち最初の配本は『第七巻 存在の探求 上』昭和四十二年十一月十五日 第一刷発行 七百五十円。埴谷雄高『死霊(全)』が幻の書と紹介されていた。わくわく…

屈折 鬱屈 挫折(閑人亭日録)

屈折、鬱屈、挫折。嬉しくない言葉が三つ並んだ。それは私の青春の代名詞。まあ、ひどい言葉だ。でも、そう。大学の卒業時、母親から懇願され、一年間地元の調理師学校へ通った。早朝、両親の営む甘味処の商品の仕込みを手伝ってから学校へ。半年後、仕込み…

曇天小雨黄昏・・・(閑人亭日録)

午前の会合を欠席。午前午後、布団で横になる。ことんと寝落ち。なんでこんなに寝てしまうのだろう。陽気のせいか。病み上がりのせいか。 大坪美穂さんの個展が紹介されている記事。来月行かれればいいが。 https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/2024/04/18…

深沢幸雄の盃(閑人亭日録)

銅版画家・深沢幸雄氏から生前恵まれた盃二客を久しぶりに卓上に置いて鑑賞。一つは径65mm、高さ50mmほどの渋く青い釉薬が厚く掛けられた磁土の盃。もう一つは径70mm、高さ50mmほどの渋い灰釉薬の掛けられた塩笥(しおげ)型の陶土の盃。どちらも小ぶりで掌…

牧村慶子(閑人亭日録)

昼過ぎ、沼津市でギャラリー・カサブランカを営んでいた勝呂女史が来訪。去年の夏に逝去された絵本画家牧村慶子さんの絵をデータベ-ス化するために、私のもっている二点を借りていかれる。勝呂さんは、去年から体調不良で仕事を休まれていた。まだ本調子で…

賞味期限 消費期限 つづき (閑人亭日録)

味戸(あじと)ケイコさんの場合はどうだろう。椹木野衣・編集『日本美術全集 第19巻 戦後~一九九五 拡張する戦後美術』小学館 二〇一五年八月三十日 初版第一刷発行、「150 雑誌『終末から』表紙絵 味戸ケイコ」、椹木野衣(さわらぎ・のい)「解説」から…

賞味期限 消費期限 (閑人亭日録)

食べ物に賞味期限(おいしく食べられる期限)と消費期限(食べられななる時)があるように、美術作品にも賞味期限(評価される期限)と消費期限(評価されなくなる時)があると思う。鮮度が命の野菜、魚の刺身。漬物や味噌、ウィスキーのように熟成するもの…

奥野淑子 佐竹邦子(閑人亭日録)

奥野淑子(きよこ1978年~)さんの木口木版画が、美術界で話題になったり、美術雑誌の記事に取り上げられたりしたことを、グループ展の広告以外に私は知らない。某版画雑誌の編集長も知らなくて、五年ほど前、我が家で彼女の木版画をお見せしたら仰天。頼ま…

北耀変茶盌(閑人亭日録)

いまだ恢復途上にある心身には読書は向かない。座卓に北一明の耀変茶盌を置いて鑑賞するのが心地よい。午前の陽光を受けて、轆轤成形の茶盌は、見込みの底、胴の緩やかに波打つ曲面に散る金星斑が星影のように浮かぶ。視点を少し移せば、漆黒面は突然光彩を…

一日が早い(閑人亭日録)

風邪は収まってきたけど、体重は入院前に較べて八キロ減のまま。体力、持続力が恢復しない。ゆっくり自宅静養。寝たり起きたり、一日の過ぎるのが早い。

マンガ展(閑人亭日録)

ポンピドゥー・センターでのマンガ展「Comics, 1964-2024 29 May - 4 Nov 2024」のウェブサイト https://www.centrepompidou.fr/en/program/calendar/event/9htHbj4 風邪気味ゆえ、一日ぶらりぶらり、寝て過ごす。無理はしない。いや、できない。

味戸ケイコ展 北一明展(閑人亭日録)

味戸ケイコ展と北一明展は今のところ考えていないが、展覧会の題はいろいろ浮かんで悩ましく楽しい。今の候補。 味戸ケイコ展「心の源郷へ」 北一明展「異能の陶芸 異貌の陶彫」 来年の六月半ばに近所の貸画廊で開催する「没後40年 つりたくにこ展」のキャチ…

『日本のライト・ヴァース I』(閑人亭日録)

本棚からやっと見つけた本、谷川俊太郎・編『日本のライト・ヴァース I 煖櫨棚上陳列品一覧』書肆山田(発行日の記載はなく、谷川俊太郎の「あとがき」に「一九八〇年十一月」)を再読。読みたかった天野忠「虫」をやっと読む。《 虫 病気が癒ってしまい す…

東君平(閑人亭日録)

東君平の私家版豆本『くんぺい ごしちご アフリカえほん』1981年9月 著者・発行者 東君平(縦85mm横90mm)を開く。91頁の本。一編四頁の構成。おしまいの一編、最初の一頁(86頁)は黒い地に白い字(切り絵)で「バオバヴの/かごにおもいで/つめきれず」。左頁…

芸術の慰撫(閑人亭日録)

味戸ケイコさんの絵を身近で何気なく見つめているとき。北一明の茶盌(茶碗)を手にとり何気なく見つめているとき。なにかしら気持ちが落ち着き、じっと魅入っている。時の経つのを忘れている。ふと気づき、もっと見つめていたいと切に思う。無心であり、夢…

「わたくしは誰?」(閑人亭日録)

青梅市の歌人王紅花(筆名)さんから送られた個人誌『夏暦』五十八号の題は「わたくしは誰」。三十首ほどの作品に飛び抜けた一首が見つからなかったが、「わたくしは誰?」という結句が引っかかった。埴谷雄高の長編小説『死霊』のメインテ-マ「自同律の不…

感想に頭を使う(閑人亭日録)

個人短歌誌、業界紙連載記事、葉書等届いた文面に目を通す。さて、どんな感想を認めるか。いつも悩む。さらに困るのは、字がさらに下手になったこと。パソコンに入力すれば読みやすい字体が並ぶのは楽~だが、ここには プリンターが無い。一件はメールで感想…

生動力 静動力 制動力(閑人亭日録)

私の推す美術家たちの特徴を表す生動力、静動力、制動力という漢字が浮かんだ。アルファベットでは思いつかない言葉。簡単にメモ。 ・生動力 上條陽子 奥野淑子 佐竹邦子 白砂勝敏 ・静動力 味戸ケイコ ・制動力 北一明 作品から美術家の生命力の勢いを直(…

LED照明(閑人亭日録)

昨日、書斎の照明を電球からLED照明に替えたが、その効果に驚く。北一明の耀変茶盌に顕著だが、耀変が鮮烈に現れる。いやあ参ったわあ。技術の進歩は侮れない。 「アブソリュート・チェアーズ」なる椅子の展覧会が埼玉県立近大美術館で開かれている。 htt…

『記憶と芸術』九(閑人亭日録)

丸川哲史「戦前の記憶と戦後の生 太宰治における天皇・メディア」から。《 これから述べることは、決して言葉遊びではない。すなわち、そのように始まった戦後民主主義なるものの複雑な曲折があり、そこで「人間宣言」ならぬ『人間失格』という題名の作品が…

つりたくにこ続報(閑人亭日録)

夕方、つりたくにこさんの夫高橋直行氏から電話。ポンピドゥー・センターの企画展は、マンガ月刊誌『ガロ』で活躍した五人の漫画家、阿部慎一、勝又進、つげ義春、林静一そしてつりたくにこの五人展。6月から11月まで長い展示になる。『ガロ』について。 …

「つりたくにこ展」再び(閑人亭日録)

来年六月、「マンガ家つりたくにこ没後40年、つりたくにこ展」を開催する企画を立ち上げる。故つりたくにこさんの夫、高橋直行氏から返事のメール。《 いいですね。今年5月から11月迄ポンピドゥーで原画五点が展示され、来年三島の画廊で引き続き観ても…

『記憶と芸術』八(閑人亭日録)

虎岩直子「W・Bイェイツとヒューマス・ヒーニーをめぐる記憶」結び近く。《 空っぽで自由だからまた別のものと繋(つな)がっていく。「記憶」とは刻々と変化していく現在生きる個人あるいは共同体が保持している過去(であるから記憶の形も刻々と変化して…

『記憶と芸術』七(閑人亭日録)

高遠弘美「「引用的人間」の記憶について」から。《 言い古された言葉のようだが、「美しい」という要素は詩文を暗記するうえで最終的にして決定的な要素であるような気がする。 》 268頁《 あまたの藝術作品をただ死蔵せるがごとくしまっておくのではなく、…