「美」ということ(閑人亭日録)

昨日、「美=表現形態の極限を拡張する潜勢力に心が震える」と書いたが、具体例を挙げる。白砂勝敏『木彫椅子 ナゴメイテ』2010年作。 https://shirasuna-k.com/gallery-2/wood-sculptures-chair/ そこに掲載された拙文「見出された、かたち」の結び。《 木…

「美しい」と「美」の間(閑人亭日録)

「美しい」と「美」の違いについて私的見解。 美しい=表現形態の極みに心が痺れる 美 =表現形態の極限を拡張する潜勢力に心が震える 昨日挙げた「KAOSU7」の作家たちは皆、「美しい」作品を制作し、さらに「美」へ踏み込んだ作品をも制作するだろう…

「KAOSU7」(閑人亭日録)

しばらく前「KAOSU(カオス)」なる私的造語を披露した。 K 上條陽子 北一明 A 味戸ケイコ O 奥野淑子(きよこ) S 佐竹邦子 白砂勝敏 U 内野まゆみ ここに挙げた作家は、私の推す美術家たち。半世紀余りの美術遍歴、美術探求で出合い、その作品を…

現役作家(閑人亭日録)

現在、多摩美術大学の教授でリトグラフ作家の佐竹邦子さん。1997年春、多摩美術大学院生卒業制作展に遭遇。さほど広くないギャラリーで注目したリトグラフ作品に「これ、いいな!」と感想を発したら、そばにいた女性が「私です」と声を上げた。それが佐竹さ…

アーティスト~作家(閑人亭日録)

朝のNHKテレビで横浜黄金町の若手アーティストを何人か紹介していた。ここから何人が独り立ちするか、と語られた。制作品をちらっと見た限りでは、ふうんで終わった。最近は自称であれ、他称であれ、アーティストを言えばかっこいい、さしさわりがないと…

「密室における孤独な作業」(閑人亭日録)

『山崎方代全歌集』全歌集後記で玉城徹は書いている。《 方代は、きわめて鋭敏な方法意識をもった、その点で、もっとも現代的な専門作者の一人であったと言ってよい。彼の制作は、それ故に、密室における孤独な作業であった。 》 498-499頁このくだりは埴谷…

『山崎方代全歌集』再び・二(閑人亭日録)

昨日のつづき。付箋を貼った後半。 ようやく鍵穴に鍵をさし入れるこの暗がりのうらがなしさよ なんとなく泣きたいような気持にて揚げ玉を袋につめてもらいぬ こんなにも湯呑茶碗はあたたかくしどろもどろに吾はおるなり 無情とはかかわりもなくあんぐりと砂…

『山崎方代全歌集』再び(閑人亭日録)

本棚から『山崎方代全歌集』不識書院 一九九六年一月二〇日二刷を本棚から取り出す。いつ読んだか忘れてしまったが、前半の全歌集の頁には付箋が林立。そこを辿ってみる。 東洋の暗い夜明けの市に来て阿保陀羅経をとなえて歩く 茶碗の底に梅干の種二つ並びお…

月例作業(閑人亭日録)

午前十時前、自転車を引いて源兵衛川中流部、水の苑緑地かわせみ橋へ。すでにお二人が待っている。事情を説明し、お二人にゴミ拾いを委ねる。見守る。一作業を終えて雑談。解散。荷台にゴミ袋を載せて自転車を引いて帰宅。乗るのもこわいが、バランスとるの…

北一明の未掲載作品(閑人亭日録)

晴天に恵まれた午前十時、久しぶりに北一明の耀変花生けを鑑賞。大宇宙を想起させる暗色の彫刻面。陽光を受け、深い暗色から燦然たる耀きへの変幻。美は細部に顕れる。不安定な体調ながら、それゆえにゆっくり(じっくり)鑑賞。北の代表的作品と評価するが…

自分のために(閑人亭日録)

病院へ。10時診療。先生との会話だけで、診察終了。一月後の予約をする。順調に回復しつつあるようだ。ほっ。 夕方、同行してくれた彼女が「もう、自分のためにお金を使いなさい」と言う。そうだな。自分のためにお金を使う。もう、そんな時期だろう。

休養(閑人亭日録)

きょうも寒々とどんよりした曇天。体調もどんより。スーパーの入口でご近所の奥さんと挨拶を交わす。「瘦せたわね」と言われる。救急搬送から一月。体重は測ったことがない。歩くと息切れがする。体力の落ちたことを実感。きょうは読書もせず。一日は退屈す…

書かれなかった結末(閑人亭日録)

昨日のブログのリンク先の YOU YUBEで埴谷雄高『死霊』の書かれなかった結末がインタユーで語られる。そうか、そうか。 寒々とどんよりした曇天。なにもせず過ごす。

『死霊 九章《虚体》論──大宇宙の夢』二(閑人亭日録)

昨日は恢復途上の体調がおかしく、読書は進まず、引用文は誤字だらけだった(寝る前に気づいた)。一進一退の体調・・・困ったことだ。・・・さて読むか。摩訶不思議な対話が繰り広げられる。《 ──ふーむ、そして、これまた迷妄の生物史のはじめのはじめに停…

『死霊 九章《虚体》論──大宇宙の夢』(閑人亭日録)

埴谷雄高『死霊 九章《虚体》論──大宇宙の夢』講談社一九九五年一二月二〇日第一刷発行を開く。《 一昨日、その三輪君は、私に──嘗てなかったもの、また決してあり得ぬもの、のみをこそひたすら求めていて、人間が人間である自己証明として、「創り出す」そ…

『死霊 八章《月光のなかで》』(閑人亭日録)

昨日は時間観念を忘れてしまったようだ。なんか一日飛ばしてしまったような。夜更けまで読み耽っていたせいだろう。パソコンを起動するまではいいが、キーボードをう打つとき、ずいぶん打ち間違える。まったくう・・・。病み上がりでどうも感覚がおかしい。…

『死霊 七章《最後の審判》』五(閑人亭日録)

《 あっは、換言すれば、俺は虚とともにつねにおり、虚は俺とともにつねにいると先程いったが、おお、いいかな、しかしまた、「虚」は、俺が「虚から出現せしめた」ところの嘗てのお前達の「正」といまのお前達の「負」とやがて霊妙にくる「非」の宇宙の「す…

『死霊 七章《最後の審判》』四(閑人亭日録)

《 あっは、理解できるかな、個と他と全体、自己存在と他存在と全存在の融合をすでに遠く実現してしまったこの俺が! ぷふい、貪食細胞の忌まわしい出現のずっとずっと前に深い深い真っ暗な闇の地底にだけ住んでいた俺は、これまでの全生物のすべてに知られ…

『死霊 七章《最後の審判》』三(閑人亭日録)

《 おお、「自己存在」! さて、いま、ここに、ようやく在ることになったその「自己存在」こそは、長い長い驚くべきほど長い「物質連鎖」の過酷な分離と結合のなかで積みに積みあげられつづけてきた重い重い「存在の苦悩」にその何かを絶えず圧しつぶされな…

『死霊 七章《最後の審判》』二(閑人亭日録)

弾劾はサッカ(釈迦)へ向けられる。そして。《 おお、イエスに食われてイエスとなったガリラヤ湖の大きな魚よ、「説きおおせなかった」釈迦をこそ弾劾すべきであった小さなチーナカ豆よ、「死のなかの生」から生物史はじめて不毛の荒地の高い枯れた樹へと向…

『死霊 七章《最後の審判》』(閑人亭日録)

埴谷雄高『死霊 七章《最後の審判》』講談社 一九八四年一一月二六日 第一刷発行、前半を読んだ。復活したイエスへの弾劾が延々と述べられる。《 いいかなイエス、死を怖れて、新しい生へと『復活』したところのそのお前がまだ飢えつづけて、まず真っ先の振…

書類の補充(閑人亭日録)

確定申告の提出書類に不備があり、郵便局、銀行、不動産屋と巡り、会計事務所に電話。書類の補充が片付き、やれやれ。くた~。あとは休息。オツムが過熱。恢復途上の身にこたえるわ

『死霊 六章《愁いの王》』(閑人亭日録)

一日冷たい雨。埴谷雄高『死霊 六章《愁いの王》』講談社一九八一年九月八日 第一刷発行を読んだ。深い夜の場面から一転、晩夏の海に近い河に浮かぶボートでの出来事が綴られる。間奏曲のよう。

和のミニマルアート(閑人亭日録)

晴天。風が少し強い。冷たい。洗濯物を慎重に干す。回復途上の身。しみじみ。二週間ぶりに掃除機を使う。ゆっくり動かす。和室の二部屋だけで終了。珈琲で一休み。床の間に掛けてあるA4版の厚板の下半分を藍染めの液に漬けた作品を鑑賞。藍染めの試作に使…

『風一つ』(閑人亭日録)

冷たい雨の一日。ぼんやりと過ごす。病院では無為にすごすことがつらかったが、自宅ではそんなことはない。狭い書庫で三方を本に囲まれて背文字を読んでいるだけでこころが和む。・・・しかし、探している本が見つからない。小体なライト・ヴァースのアンソ…

帰還(閑人亭日録)

7日昼前救急搬送されて入院した病院を退院、帰宅。入院中に埴谷雄高『死霊』講談社一九七六年四月二十二日 第一刷発行を読了。第一章から五章を収録。病室で退屈と鬱屈を紛らわすにはうってつけ。無窮の夢魔の世界を引き摺り回される印象。好悪が分かれるだ…

『死霊』二(閑人亭日録)

以下、七日の日録。 埴谷雄高『死霊』を初めて読んだのは、『全集・現代文学の発見 第七巻 存在の探求 上』学藝書林 昭和四十二年十一月十五日 第一刷発行 でだった。その本はどこかへ行って、本棚にはきれいな状態の翌年の二月一日発行がある。挟み込みの小…

『死霊』(閑人亭日録)

埴谷雄高『死霊』講談社一九七六年四月二十二日 第一刷発行を少し再読。「自序」にこんな文。《 私はついにせめて一つの観念小説なりともでっち上げねばならぬと思い至った。やけのやんぱちである。けれども、その無謀な試みの如何に嬴弱なことであるだろう…

来し方、この先(閑人亭日録)

寒々とした雨の暗い一日。用もなく、来し方、この先をぼんやりと思う。この二か月、積年の疲れを癒していたような。二月に入っても同じような気分。壁三面を埋める本棚を眺める。文学~ミステリ~人文科学~美術本などなど。古くはホメロス『オデュッセイア…