2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『乳いろの花の庭から』つづき

昨日の高遠弘美『乳いろの花の庭から』ふらんす堂で印象的だったほかのくだりを。 《 それは一言でいってフローベール以後の小説が負わされた課題だったのかも知れないが、この人間は一元的でない という発見というよりむしろそうした発見を物語の形でみごと…

『乳いろの花の庭から』

高遠弘美『乳いろの花の庭から』ふらんす堂1998年初版を読んだ。引用されている岡倉天心の手紙文。 《 詩の偉大さは、事物の内部の琴線に触れる力によって測られるものではないですか。一滴の水、蓮の葉をころがる 真珠の一滴の露には、大海そのものと同じ高…

「乳房」

味戸ケイコさんから新作展の案内葉書が届く。 「夕暮れの少女」10月17日(月)〜29日(土) ギャラリーハウスMAYA http://www.gallery-h-maya.com/schedule/17479/《 17、20、22、26、29、ギャラリーに行っています 》 ブックオフ長泉店で二…

『見世物大博覧会』

山口昌男の三部作『「挫折」の昭和史』『「敗者」の精神史』『内田魯庵山脈』を読んで、プラハ生まれの劇作家で チェコ共和国の大統領を努めたヴァーツラフ・ハヴェルの言葉が浮かんだ。 《 たしかに、ある意味では、知識人とは、もともといつでも戦う前から…

『内田魯庵山脈』其の八(完)

《 日本近代の面白さの一つは、数々の新しがり屋が出て先人の業績否定を行ってきたが、最も鋭い感性の持ち主には 一貫した趣向が持ちつづけられるということである。その例が今触れているルイーズ・ブルックスである。ルイーズ・ ブルックスについては晩年の…

『内田魯庵山脈』其の七

《 魯庵の批判は、図書館、博物館が、さまざまなコレクションの総体からなっていないという成立の根本理念を 衝いていて鋭い。今日ではこのコレクション嫌いは大学図書館の書物嫌いという形で各所に表れている。 》 475頁下段 《 美術館などという空間消費量…

『内田魯庵山脈』其の六

《 筆者はかつて三十年前、「徒党の系譜」という文章において、少数派の徒党は歓迎するが、多数派の徒党は いただけないことを主張した。今日日本の学界はほとんど学閥・地方閥を中心とする多数派徒党の巣になってしまった。 曰く、文化人類学党、社会学党、…

『内田魯庵山脈』其の五

《 大正末から昭和にかけて『いもづる』という無料の趣味雑誌が存在した。編集人は斎藤昌三。 》 280頁上段 《 「いもづる」は「以毛図流」「以茂図流」とも書き、「以茂随流」などとも書いた。そしてお互いを”いも仲間” と称したという。 》 281頁下段 《 …

『内田魯庵山脈』其の四

《 横尾勇之助は、新聞記者が在職中一、二冊本を出版しただけで停年後に簡単に大学教授になれる今日の風潮の 中でならば、楽に教授たるべき人材であった。しかし魯庵同様それを特に望む人物でもなかったことは確かである。 》 188頁下段 《 いったい、旧軍人…

『内田魯庵山脈』其の三

《 それがフレデリック・スタール Frederick Starr である。 このスタールこそ、一九○四年(明治三十七年)の初来日以来大の親日家となり、幕末の北方探検家松浦武四郎に ついて論文を書いた日本を含め世界中で最初の人だったのである。 》 116頁上段 《 武…

源兵衛川再生聞き取り調査

いつもより一時間多く九時間寝た。まだ寝足りない気分。ずっと寝ていてもいい気分。それじゃ寝たきり老人だ。曇天、 雨の日はオツムまで休眠状態。体はキコキコ動くので、動きのままにトイレを掃除したり掃除機をかけたり。ふう、汗〜。 シャワーを浴びる。 …

『内田魯庵山脈』其のニ

民俗学の大家柳田国男には辛辣な批評を向けている。 《 柳田の「田舎者」コンプレックスは複雑で、逆に田舎出身でも出世コースの頂点を極めれば、江戸前とか何とか 言いながら官製国家の末端にも繋がっていない連中より遥かに上だという優越感がちらついてい…

始まりの『内田魯庵山脈』

午後、昨日のブログの養魚場跡の湧き水を友だちの希望で案内。ガンガン噴き出す湧水を彼女はアイフォンでカシャ。 私は「写ルンです」でカシャ。昨日撮るのを忘れていた。整備されればこの廃屋は無くなる。今しか見られない風景。 喜んでもらえてやれやれ。 …

「境川、下調査」

開店一番、ブックオフ長泉店へ文庫本を持っていく。二十冊くらいか。三百円になればいいなあ、と思っていたら、 七百三十円。何が高かったんだろう。その金で芦辺拓『不思議の国のアリバイ』光文社文庫2003年初版、太田忠司『クマリの 祝福』中公文庫2015年…

『「敗者」の精神史』

昨夜パソコンが不調に。午後九時回復。やれやれ。山口昌男『「敗者」の精神史』岩波書店1995年初版を読了。 実に面白い労作だ。 《 今日各分野の学問が目指している学問の形は、事実のヒエラルキーにある。一定のパラダイムの中で、或る一群の事実に 上下関…

「西国の人気者 久保田米僊の明治」

山口昌男『「敗者」の精神史』岩波書店、第13章「西国の人気者 久保田米僊の明治」を読んだ。絵は当時の本で知っているが、 経歴などは全く知らなかった。まさしく「西国の人気者」だわ。 《 ついでながら、当時刊行されていた『美術世界』という雑誌の一…

「『穢い絵』の問題」

昼前一時間余り埼玉県戸田市の三十余名を源兵衛川の視察に案内。視察寸前に雨が止む。終えたらまた雨。ぐったり。 山口昌男『「敗者」の精神史』岩波書店、第12章「『穢い絵』の問題」を読んだ。大正時代の京都日本画壇、甲斐庄楠音 (かいのしょう・ただ…

「小杉未醒/小川芋銭」

雨で燃料切れなのか、本を読むのがまた遅くなる。山口昌男『「敗者」の精神史』岩波書店をきょうは「11章 小杉放庵のスポーツ・ネットワーク」を読んだ。小川芋銭が話題に。知人女性の夫の祖父が小川芋銭。昔彼女の家で 肉筆画を拝見。多くの絵は東京国立…

「老後のために」

大岡信『悲歌と祝祷』『春 少女に』のニ詩集そして『自選 大岡信詩集』岩波文庫を読んで、三浦雅士の解説 「ある愛の果実」の意味が深く染む。この『自選 大岡信詩集』そのものがある愛のうた(果実)なのだ。捧げ物なのだ。 だから自選。 朝一番で近くのみ…

『春 少女に』再読

JR東海のウォーキング・イヴェントで源兵衛川を中高年が切れ目なく列をなす。こちらは月例清掃。きのう 取材を待つ間掃除していたので気が入らなかったが、女性二人が横浜からわざわざ川掃除に来てくださったので、 元気がでる。 下の書き込み、ずっと前だ…

「テレビ取材」

上天気な昼下がり、源兵衛川の川掃除をテレビ取材。せわしない依頼であたふた。到着が遅れて二時間待ち。待つ間に いろいろな人が歩いてゆく。千葉県、東京渋谷、静岡……。取材は十分もかからず。無事済んでやれやれ。午後四時帰宅。 くたくた。 時間をかけて…

『天狗起し』『小梅富士』

なにを見落としているのか。昨日持っていないと記した『うそつき砂絵』、二冊合本『さかしま砂絵/うそつき砂絵』 光文社文庫2011年初版を持っていた。こりゃ、うそつきになるわ。『ほりだし砂絵』でシリーズベスト2と謳われた 「天狗起し」と「小梅富士」…

『ほりだし砂絵』

数日だが鶴首して待った都筑道夫『ほりだし砂絵 なめくじ長屋捕物おさめ』盛林堂ミステリアス文庫2016年が届く。 http://seirindousyobou.cart.fc2.com/ca1/245/p-r-s/ 早速読んだ。開始一ページにウワッ。 目も鼻もないのっぺらぼう 河童(かっぱ)のすむの…

『悲歌と祝祷』再読

4月27日に記した大岡信詩集『悲歌と祝祷』青土社1976年初版を再読。どんなふうに論じられているか検索。 ある人のブログに収録作「風の説」への三浦雅士の解説が転載されていた。 http://hannah5.exblog.jp/5715994/ 三浦雅士の解説に出てくるエロチシズ…

「敬意と信頼」

女性にはモテないことを自覚している私は、何か褒められてもさほど嬉しくはないが、敬意と信頼をもって話されると 嬉しくなる。社交とはそういうことだと思うが、きのうときょう別の女性からそれを感じ、嬉しさにふわっと包まれた。 たまにはいい日もある。 …

『言語空間の探検』

大岡信編集『全集・現代文学の発見 第十三巻 言語空間の探検』学藝書林1969年初版、解説の大岡信「『現代詩』 の成立──『言語空間』論──」は、今もって新鮮な知的刺激に満ちている。 《 言葉はイメージをよび起すことができるが、イメージが出現するというこ…

『自選 大岡信詩集』つづき

大岡信『自選 大岡信詩集』岩波文庫2016年初版、自選ということを考えた。選詩集には例えば田 原・編 『谷川俊太郎詩選集1,2,3』集英社文庫のように、他者が選んだ選詩集と自選集がある。大岡信は自選を選んだ。 他者には委ねられない切迫したものをう…

『 Maurice El Medioni meets Robert Rodriguez / DESCARGA ORIENTAL 』再び

午後、源兵衛川下流部で雑草の刈り取り作業を、知徳高校の生徒さん二十人ほどと一緒に行う。若い人たちを見ると、 ついつい頑張ってしまい、帰宅すればくたくた。ふう。けれども気持ち良い疲れ。これまた快感。 快感といえば、7月27日に記した『 Maurice …

『自選 大岡信詩集』

大岡信『自選 大岡信詩集』岩波文庫2016年初版、三浦雅士の解説を読んだ。斬新な視点から大岡信の批評と詩の関係を 読み解いてゆく鮮やかな手腕に敬服。他者の大岡信論を寡聞にして知らないが、これが出た後で果たして出るだろうか、 と案じる。 《 鮎川[信…

「過去をもつ人」

昨日の加藤郁乎の一文に見られる「椿岳と寒月」は、淡島椿岳(あはしま・ちんがく)と淡島寒月(かんげつ)親子。 《 椿岳の女性との関係は、今日の常識からみて、ほとんど想像を絶するほどのものである。ふつう、椿岳が取り替えた お妾の数は一六○人と言わ…