2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

再読『内田魯庵山脈』三(閑人亭日録)

山口昌男『内田魯庵山脈 〈失われた日本人〉発掘』晶文社2001年初版、「9 江戸百科全書派の美校教授──竹内久一」を読んだ。「10 三村竹清の日記」を読んだ。 《 本章の記述はあくまでも魯庵の同時代を見る眼という視点、そして魯庵の眼の中に飛び込んできた…

再読『内田魯庵山脈』二(閑人亭日録)

山口昌男『内田魯庵山脈 〈失われた日本人〉発掘』晶文社2001年初版、「5 蒐集家の筆頭──林若樹」を読んだ。 《 ここで魯庵は(林)若樹を、柳田国男のように、金持ちの道楽息子が骨董品や書籍を土蔵に秘め匿し持って、ときどき取り出してひけらかすという…

再読『内田魯庵山脈』(閑人亭日録)

山口昌男『内田魯庵山脈 〈失われた日本人〉発掘』晶文社2001年初版の再読を始める。「あとがき」から。 《 魯庵がこれらの時代をそれぞれの主題に立ち向かいながら生き、しかもどの時代にも取り込まれることなく自己を実現していった様態を描きたいと思った…

『東方綺譚』(閑人亭日録)

マルグリット・ユルスナール『東方綺譚』白水社1980年初版を読んだ。奇譚という題名どおりの九篇の短篇からなる。酷薄なものが多い。必要なので読んだが、好みでは ない。帯には中村真一郎の推薦文。 《 『東方綺譚』はユルスナール女史の極めて才気に満ちた…

個展の打ち合わせ(閑人亭日録)

朝から外出。午後、近所のギャラリーVia701で白砂勝敏さんと友だちのデザイナーの三人で二月下旬の白砂勝敏展について打ち合わせ。夕食をはさんで話は続く。 午後七時半帰宅。ふう。けっこう疲れたと気づく。 ネット、うろうろ。 《 はんだ付けアートコンテ…

再読『「敗者」の精神史』八(閑人亭日録)

山口昌男『「敗者」の精神史』岩波書店1995年初版の再読を進める。「14 幕臣の静岡──明治初頭の知的陰影」を読んだ。 《 敗者の身の処し方は勝者と異なって、自然・人間・文化に対して、もうひとつの視点を形づくっていくというところにあるはずであった。旧…

再読『「敗者」の精神史』七(閑人亭日録)

山口昌男『「敗者」の精神史』岩波書店1995年初版の再読を進める。「12 「穢い絵」の問題──大正日本の周縁化された画家たち」を読んだ。 《 さて、一九九三年秋の京都では、もう一つの興味深い展覧会が行われていた。「京の美人画展」(京都文化博物館)がそ…

再読『「敗者」の精神史』六(閑人亭日録)

山口昌男『「敗者」の精神史』岩波書店1995年初版の再読を進める。「11 小杉放庵のスポーツ・ネットワーク──大正日本における身体的知」を読んだ。 《 今日であれば不可能な幅の広さで、さまざまな人を結びつけた(小杉)未醒の能力は、未だに主義が人を分か…

再読『「敗者」の精神史』五(閑人亭日録)

山口昌男『「敗者」の精神史』岩波書店1995年初版の再読を進める。「9 二つの自由大学運動と変り者の系譜」を読んだ。 《 車人形の伝承者の西川古柳の家と松井(翠次郎)宅は目鼻の先である。私は、西川師匠に松井についていろいろと語っていただいた。話は…

再読『「敗者」の精神史』四(閑人亭日録)

山口昌男『「敗者」の精神史』岩波書店1995年初版の再読を進める。「5 敗者たちの生き方」を読んだ。 《 戊辰戦争で敗れた諸藩出身の人物が、藩閥、軍閥の階層秩序から排除されたことは良く知られている。例えば東条英機の父英教も岩手藩の出身であったため…

再読『「敗者」の精神史』三(閑人亭日録)

山口昌男『「敗者」の精神史』岩波書店1995年初版の再読を進める。昨日の「近代におけるカルチャー・センターの祖型──文化装置としての百貨店の発生(二)」の 補遺。 《 ただし、これまで読んですごいことが起こったと思ったまま、今日、パリに行ってデパー…

再読『「敗者」の精神史』二(閑人亭日録)

山口昌男『「敗者」の精神史』岩波書店1995年初版の再読を進める。「1 明治モダニズム─文化装置としての百貨店の発生(一)」を読んだ。三井呉服店の経営改革。 《 さて、高橋義雄は、更に新しい呉服模様の開発を試みた。 》 20頁上段 《 高橋はまた、機構…

再読『「敗者」の精神史』一(閑人亭日録)

山口昌男『「敗者」の精神史』岩波書店1995年初版の再読を始める。先に「結びに替えて」を読む。その結び。 《 本書で説いて来たのは、日本の公的な世界の建設のかたわらに、公的世界のヒエラルキーを避けて、自発的な繋がりで、別の日本、もう一つの日本、…

再読『「挫折」の昭和史』補遺二(閑人亭日録)

山口昌男『「挫折」の昭和史』岩波書店1995年初版、「補遺2 モダニズムと地方都市──北海道と金沢」を再読。読了。 《 まことに同時代の大家というのはいつの時代にも愚かで、節穴の眼しか持ち合わせないものである。 》 404頁上段 午後、久しぶりに CRY IN …

再読『「挫折」の昭和史』補遺一(閑人亭日録)

山口昌男『「挫折」の昭和史』岩波書店1995年初版、「補遺1 知のダンディズム再考──「エロ事師」たちの精神史」を再読。「トリックスター梅原北明」を軸に 展開される。 《 カーニバル空間こそ、抽象化して、文化の文脈から離脱しがちな絵画芸術に、身体性…

ケイコと慶子(閑人亭日録)

味戸ケイコの遠くから届く夕方の微かな光。牧村慶子の近くから降る朝方の柔らかな光。一見対蹠的であるけれども、対照すると、同じ世界、地平にあることがわかる。 そしてその情景からほのかに伝わってくる、何気なく微かな気配が、他の画家の絵には意外と見…

牧村慶子展三日目・最終日(閑人亭日録)

オフィス・カサブランカの勝呂さんが開けてくれるので重役出勤。充分睡眠。スッキリ目覚め。ゆっくりお出かけ。お昼にギャラリー到着。 午後、ご主人に車椅子を押してもらって牧村さん来訪。お待ちかねの人たちと和気あいあい。来場したケア・マネージャーの…

牧村慶子展二日目・中日(閑人亭日録)

牧村慶子展、十時の開展から五時の閉展まで、きのう同じく一人で受付。きのうと同じく午後七時半過ぎ帰宅。明日はゆっくり出かける。 二日間の受付で吉田篤弘『空ばかり見ていた』文春文庫2009年初版を読み終えた。十二篇からなる短編集。佳作と評したくなる…

牧村慶子展初日(閑人亭日録)

牧村慶子展、十時の開展から五時の閉展までずっと受付作業。来訪者は多くはないけど、誰もがじいっと見入っている。そして長テーブルに置かれた絵本ヤ雑誌を 手にして「懐かしい」と呟いたりする。まあ、どなたも滞留時間の長いこと。開催者冥利に尽きる、と…

牧村慶子展、作品設置(閑人亭日録)

習志野市習志野文化ホールのギャラリーに行き、友だちと二人で牧村慶子さんの絵三十点余を展示。午後四時半終了。やれやれ。一路帰宅。 『最後の楽園』服部まゆみさんのご主人から返礼の葉書。 《 また作品順は、私と編集者が考えました。はじめから順に読ま…

 再読『「挫折」の昭和史』四(閑人亭日録)

山口昌男『「挫折」の昭和史』岩波書店1995年初版を再読。「5 絵師と将軍」を読んだ。 《 結局は、柳田(国男)の民俗学は平地の稲作中心の都市的貴族的な視点から構築されたもので、小山(勝清)の山村の内側から掴みとってきた世界像とは所詮 折り合わな…

再読『「挫折」の昭和史』三(閑人亭日録)

山口昌男『「挫折」の昭和史』岩波書店1995年初版を再読。「3 スポーツの帝国(一)──小泉信三とテニス」「4 スポーツの帝国(二)──岡部平太の”満州”」 を読んだ。後者から。 《 たしかに、満鉄は、当時の日本の東アジア大陸への侵略の橋頭堡であり、スポ…

再読『「挫折」の昭和史』二(閑人亭日録)

山口昌男『「挫折」の昭和史』岩波書店1995年初版を再読。「2 戦争と”知識人” 名取洋之助から富塚清へ」を読んだ。 《 木村(伊兵衛)は一九◯一年、東京下谷の生まれである(下谷といえば私には唐十郎の『下谷万年町』という作品が想起されるが、『へるめす…

再読『「挫折」の昭和史』一(閑人亭日録)

山口昌男『「挫折」の昭和史』岩波書店1995年初版の再読を始める。「1「挫折」の昭和史──エノケンから甘粕正彦まで」を読んだ。 《 それにしても、岡、林、岡田の三氏に接しながら、この三氏が共有した魅惑的な「時」について、どの一人からも聴き出すことが…

『ミューズよ、かの人を語れ』(閑人亭日録)

服部まゆみさんの夫、服部正氏から恵まれた私家版小冊子『ミューズよ、かの人を語れ 服部まゆみの記憶と作品』2007年11月14日刊を開く。冒頭は昨日の 『時のかたち』。 《 (未発表作品・タイトル不明・一九七五年頃) 》 年譜には”高校まで熱海で過ごす。”…

『時のかたち』(閑人亭日録)

昨日購入した服部まゆみ全短編集『最後の楽園』河出書房新社を机上に立てる。カバー(ジャケット)を外すと、灰色単色の本体が虚飾を廃した未来の廃墟のように 現れる。いい題だ。ジョージ・クプラー『時のかたち』鹿島出版会2018年を遠いこだまのように感じ…

『形象と時間』四(閑人亭日録)

昨日、谷川渥『形象と時間』、「VIII 像の差異──影像・写真・絵画」「X 瞬間の変容」から”なぜかと言えば、長年考えてきたことがこの二つの章で解決の糸口 あるいは解決の一例を見いだせたから。”と書いた。そこで思い浮かべていたのは、例えば味戸ケイコ『…

『形象と時間』三(閑人亭日録)

谷川渥(たにがわ・あつし)『形象と時間──美的時間論序論』講談社学術文庫1998年初版、後半の「第二部」、「X 瞬間の変容」を読んだ。 《 「馬のエクリチュール」は結局「瞬間」の問題に収斂した。(中略)われわれはここで「瞬間」をめぐる議論において基…

『形象と時間』二(閑人亭日録)

谷川渥(たにがわ・あつし)『形象と時間──美的時間論序論』講談社学術文庫1998年初版、後半の「第二部」、「VII 記号の時間」を読んだ。つづく 「VIII 像の差異──影像・写真・絵画」を読んだ。 《 言葉は通常の意味からその響きへまず「退行」することによ…

 『形象と時間』(閑人亭日録)

谷川渥(たにがわ・あつし)『形象と時間──美的時間論序論』講談社学術文庫1998年初版、前半の「第一部」を読んだ。「序論 表象としての時間」から目を瞠る。 《 現代人は、「過去」を下方に、「未来」を上方に位置づけるだろう。 》 15頁 《 時ないし時間は…