2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

つりたくにこ続報(閑人亭日録)

夕方、つりたくにこさんの夫高橋直行氏から電話。ポンピドゥー・センターの企画展は、マンガ月刊誌『ガロ』で活躍した五人の漫画家、阿部慎一、勝又進、つげ義春、林静一そしてつりたくにこの五人展。6月から11月まで長い展示になる。『ガロ』について。 …

「つりたくにこ展」再び(閑人亭日録)

来年六月、「マンガ家つりたくにこ没後40年、つりたくにこ展」を開催する企画を立ち上げる。故つりたくにこさんの夫、高橋直行氏から返事のメール。《 いいですね。今年5月から11月迄ポンピドゥーで原画五点が展示され、来年三島の画廊で引き続き観ても…

『記憶と芸術』八(閑人亭日録)

虎岩直子「W・Bイェイツとヒューマス・ヒーニーをめぐる記憶」結び近く。《 空っぽで自由だからまた別のものと繋(つな)がっていく。「記憶」とは刻々と変化していく現在生きる個人あるいは共同体が保持している過去(であるから記憶の形も刻々と変化して…

『記憶と芸術』七(閑人亭日録)

高遠弘美「「引用的人間」の記憶について」から。《 言い古された言葉のようだが、「美しい」という要素は詩文を暗記するうえで最終的にして決定的な要素であるような気がする。 》 268頁《 あまたの藝術作品をただ死蔵せるがごとくしまっておくのではなく、…

『記憶と芸術』六(閑人亭日録)

進藤幸代「ハワイ・ポノイを歌うこと」結び。 《 日本人に人気のあるホノルルマラソンにのコースには、ハワイアンが失った土地とハワイアンにとっての聖地が含まれ、外国資本のホテルが立ち並び、スタート地点ではハワイ・ポノイも歌われる。いわばハワイア…

『記憶と芸術』五(閑人亭日録)

水沢勉「+記録/+記憶」から中村信夫「現代美術の展望」の一文。《 従来優れた作品とは、安定し、強固で、物質的であると信じられていたが、今日それらは実際には本質的にもろいものであるということに我々は注目し始めている。 》 77頁 昨日、故つりたく…

『JOUER AU LOUP』(閑人亭日録)

雨が降ったり止んだりの不順な天気。天気に連動したかのような不安定な体調を持て余しているとき、マンガ家故つりたくにこさんの夫高橋氏から嬉しいメールが届く。 《 2冊目の仏語版のタイトルがJOUER AU LOUPと決まり、6月に出ます。tague.playing tag. …

『記憶と芸術』四(閑人亭日録)

谷川渥「絵画の時間性 序説」から。《 美や芸術の脱時間性をア・プリオリに主張するならはじめから問題はない。(引用者・略)というのも、芸術においてこそ、時間の現在性というものがもっとも顕著にあらわれるからである。 》 55頁《 理由律に従い、既知の…

『記憶と芸術』三(閑人亭日録)

最初の北川健次のエッセイ「記憶と芸術──二重螺旋の詩学」から。《 クレーが矢印を使い始めたのは一九二〇年代に入ってからであるが、デュシャンの無機質に比べ、クレーは限りなく有機質の方へと「矢印」の意味が分化した事は興味深い。では美術の枠を出て人…

『記憶と芸術』二(閑人亭日録)

昨日の記事をあげるのを忘れていた。 語り手:谷川渥 聞き手:中村高朗「澁澤・種村(おうごん)時代を語る」を読んだ。谷川渥の発言。《 あれは河出書房新社にいた安島真一君、のちに安藤礼二という名で大活躍することになる彼ですけど、彼がよく僕に声をか…

『記憶と芸術』(閑人亭日録)

中村高朗・虎岩直子 編著『記憶と芸術 ラビリントスの谺』法政大学出版局2024年3月4日初版第1刷発行を近くの本屋で受けとる。 https://www.h-up.com/books/isbn978-4-588-41039-0.html 虎岩直子「まえがき」を読む。《 「記憶と歴史」が学問領域として注目さ…

越境する上條陽子(閑人亭日録)

1989年の初夏だろうか、東京・六本木のギャラリーで画家の木葉井悦子さんから上條陽子さんを紹介された。「種村季弘さんの友だち」という木葉井さんの紹介に上條さんは反応し、『上條陽子画集』PARCO出版局1989年5月26日 第1刷を私に恵まれた。未知の画…

孤高の陶芸術家(閑人亭日録)

午前、北一明の耀変茶碗を太陽光のもとで鑑賞する。玄妙な濃紺地が突然、光彩陸離たる耀きへ変幻。魅せられる。「曜変」茶碗の再現を試みている陶芸家は何人もいるようだが、北一明の「耀変」茶碗は、唯一無二だろう。最初の「耀変」焼成から半世紀ほどが経…

「美」ということ(閑人亭日録)

昨日、「美=表現形態の極限を拡張する潜勢力に心が震える」と書いたが、具体例を挙げる。白砂勝敏『木彫椅子 ナゴメイテ』2010年作。 https://shirasuna-k.com/gallery-2/wood-sculptures-chair/ そこに掲載された拙文「見出された、かたち」の結び。《 木…

「美しい」と「美」の間(閑人亭日録)

「美しい」と「美」の違いについて私的見解。 美しい=表現形態の極みに心が痺れる 美 =表現形態の極限を拡張する潜勢力に心が震える 昨日挙げた「KAOSU7」の作家たちは皆、「美しい」作品を制作し、さらに「美」へ踏み込んだ作品をも制作するだろう…

「KAOSU7」(閑人亭日録)

しばらく前「KAOSU(カオス)」なる私的造語を披露した。 K 上條陽子 北一明 A 味戸ケイコ O 奥野淑子(きよこ) S 佐竹邦子 白砂勝敏 U 内野まゆみ ここに挙げた作家は、私の推す美術家たち。半世紀余りの美術遍歴、美術探求で出合い、その作品を…

現役作家(閑人亭日録)

現在、多摩美術大学の教授でリトグラフ作家の佐竹邦子さん。1997年春、多摩美術大学院生卒業制作展に遭遇。さほど広くないギャラリーで注目したリトグラフ作品に「これ、いいな!」と感想を発したら、そばにいた女性が「私です」と声を上げた。それが佐竹さ…

アーティスト~作家(閑人亭日録)

朝のNHKテレビで横浜黄金町の若手アーティストを何人か紹介していた。ここから何人が独り立ちするか、と語られた。制作品をちらっと見た限りでは、ふうんで終わった。最近は自称であれ、他称であれ、アーティストを言えばかっこいい、さしさわりがないと…

「密室における孤独な作業」(閑人亭日録)

『山崎方代全歌集』全歌集後記で玉城徹は書いている。《 方代は、きわめて鋭敏な方法意識をもった、その点で、もっとも現代的な専門作者の一人であったと言ってよい。彼の制作は、それ故に、密室における孤独な作業であった。 》 498-499頁このくだりは埴谷…

『山崎方代全歌集』再び・二(閑人亭日録)

昨日のつづき。付箋を貼った後半。 ようやく鍵穴に鍵をさし入れるこの暗がりのうらがなしさよ なんとなく泣きたいような気持にて揚げ玉を袋につめてもらいぬ こんなにも湯呑茶碗はあたたかくしどろもどろに吾はおるなり 無情とはかかわりもなくあんぐりと砂…

『山崎方代全歌集』再び(閑人亭日録)

本棚から『山崎方代全歌集』不識書院 一九九六年一月二〇日二刷を本棚から取り出す。いつ読んだか忘れてしまったが、前半の全歌集の頁には付箋が林立。そこを辿ってみる。 東洋の暗い夜明けの市に来て阿保陀羅経をとなえて歩く 茶碗の底に梅干の種二つ並びお…

月例作業(閑人亭日録)

午前十時前、自転車を引いて源兵衛川中流部、水の苑緑地かわせみ橋へ。すでにお二人が待っている。事情を説明し、お二人にゴミ拾いを委ねる。見守る。一作業を終えて雑談。解散。荷台にゴミ袋を載せて自転車を引いて帰宅。乗るのもこわいが、バランスとるの…

北一明の未掲載作品(閑人亭日録)

晴天に恵まれた午前十時、久しぶりに北一明の耀変花生けを鑑賞。大宇宙を想起させる暗色の彫刻面。陽光を受け、深い暗色から燦然たる耀きへの変幻。美は細部に顕れる。不安定な体調ながら、それゆえにゆっくり(じっくり)鑑賞。北の代表的作品と評価するが…

自分のために(閑人亭日録)

病院へ。10時診療。先生との会話だけで、診察終了。一月後の予約をする。順調に回復しつつあるようだ。ほっ。 夕方、同行してくれた彼女が「もう、自分のためにお金を使いなさい」と言う。そうだな。自分のためにお金を使う。もう、そんな時期だろう。

休養(閑人亭日録)

きょうも寒々とどんよりした曇天。体調もどんより。スーパーの入口でご近所の奥さんと挨拶を交わす。「瘦せたわね」と言われる。救急搬送から一月。体重は測ったことがない。歩くと息切れがする。体力の落ちたことを実感。きょうは読書もせず。一日は退屈す…

書かれなかった結末(閑人亭日録)

昨日のブログのリンク先の YOU YUBEで埴谷雄高『死霊』の書かれなかった結末がインタユーで語られる。そうか、そうか。 寒々とどんよりした曇天。なにもせず過ごす。

『死霊 九章《虚体》論──大宇宙の夢』二(閑人亭日録)

昨日は恢復途上の体調がおかしく、読書は進まず、引用文は誤字だらけだった(寝る前に気づいた)。一進一退の体調・・・困ったことだ。・・・さて読むか。摩訶不思議な対話が繰り広げられる。《 ──ふーむ、そして、これまた迷妄の生物史のはじめのはじめに停…

『死霊 九章《虚体》論──大宇宙の夢』(閑人亭日録)

埴谷雄高『死霊 九章《虚体》論──大宇宙の夢』講談社一九九五年一二月二〇日第一刷発行を開く。《 一昨日、その三輪君は、私に──嘗てなかったもの、また決してあり得ぬもの、のみをこそひたすら求めていて、人間が人間である自己証明として、「創り出す」そ…

『死霊 八章《月光のなかで》』(閑人亭日録)

昨日は時間観念を忘れてしまったようだ。なんか一日飛ばしてしまったような。夜更けまで読み耽っていたせいだろう。パソコンを起動するまではいいが、キーボードをう打つとき、ずいぶん打ち間違える。まったくう・・・。病み上がりでどうも感覚がおかしい。…

『死霊 七章《最後の審判》』五(閑人亭日録)

《 あっは、換言すれば、俺は虚とともにつねにおり、虚は俺とともにつねにいると先程いったが、おお、いいかな、しかしまた、「虚」は、俺が「虚から出現せしめた」ところの嘗てのお前達の「正」といまのお前達の「負」とやがて霊妙にくる「非」の宇宙の「す…