2024-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『つりたくにこ作品集 続編』(閑人亭日録)

故つりたくにこさんの夫、高橋直行氏から出たばかりのフランス語版『つりたくにこ作品集 続編』(『JOUER AU LOUP』)をご恵投いただく。他の国の本はソフトカバーだが、正編続編ともハードカバー。 https://www.amazon.co.uk/Books-Tsurita-Kuniko/s?rh=n%3A2…

なぜその絵に惹かれるのか?(閑人亭日録)

なぜ?特定の絵に惹かれるのか。その謎。隠れた秘密…。そんなことをあれこれ考えていて永田和宏の短歌(『メビウスの地平』茱萸叢書1975年12月10日刊 収録)が浮かんだ。 剥がれんとする羞しさの──渚──その白きフリルの海の胸元 一昨日、昨日とふれた故内田…

深い味わい(閑人亭日録)

昨日、絵の密度が濃い薄いを話題にしたが、設問を間違えていた気がする。鑑賞する側から見て、その絵が味わい深いかどうかが、大事なのだ。絵の密度の濃い薄いのではなく。鑑賞する側にとってその絵が味わい深いか否かが、大事なこと。鑑賞する側に判断が委…

小さい絵の額を立てる万能台(閑人亭日録)

雨の一日。思い立って小さい絵の額を立てる台を手元の木片を使って製作した。簡単に組み立てられ、分解できる木製の台。土台を二等辺三角形に。底辺は幅のやや広い板材。△につなげて床に置く。底辺は二辺より出っ張っている。底辺に額を立てる。△の頂点と額…

掌に咲く作品(閑人亭日録)

絵画では特にそうだが、小品と言うと悪い意味で手を抜いた作、と思われる。居間に飾って邪魔にならないインテリア絵画と、普通に思われている。絵画の本領は百号を超える作品だ、と 画家たちは団体展公募展に出品する対策を立て、大作の制作に励む。展示会場…

『東瀛珠光 三』(閑人亭日録)

1月4日の日録を再掲。きょうも同じことを思った。《 正倉院御物で宮内省御蔵版『東瀛珠光 三』審美書院 明治四十一年十一月三十日發行収録、『第百七十 緑地彩色繪箱及粉地花形方几 其一 側面 其二 箱蓋正面』、「其二 箱蓋正面」の彩色木版を鑑賞。いつ見て…

貫く棒のごときもの(閑人亭日録)

高浜虚子の俳句にこんな作品がある。 去年今年貫く棒の如きもの https://gendaihaiku.gr.jp/column/1100/ 去年今年(こぞことし)を去年今年と年替わりで解釈するようだが、私は壮大に拡大して解釈する。または読み替える。一年二年ではなく千年単位の歴史を…

「ARTを超えたART作品」(閑人亭日録)

白砂勝敏さんの企画展がギャラリー音楽の森(栃木県矢板市)で催されている。 https://shirasuna-k.com/blog/tag/%E3%82%AE%E3%83%A3%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%BC%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E3%81%AE%E6%A3%AE/ 「ARTを超えたART作品」。この文言は思いつかな…

吹聴したくなる作品(閑人亭日録)

この数年、人に吹聴したくなる作品に出合っていない。山梨県立美術館で縄文土器を間近に観て以来、瞠目するような絵画、立体造形作品にお目にかかっていない。残念だ。絵画で瞠目したのは、国立西洋美術館で開催されたジョルジュ・ド・ラ・トゥール展か。ず…

カスパル・ダヴィト・フリードリヒ(閑人亭日録)

一昨日ふれた『現代の絵画 7 19世紀の夢と幻想』平凡社 昭和48年3月30日初版第1刷では「カスパル・ダヴィト・フリードリヒ(1774-1840)」と表記されている。この画集に収録された絵画の中でなぜフリードリヒの風景画に他の画家の絵よりも群を抜いて惹かれる…

今年初めての音楽(閑人亭日録)

きょう、様々なトラブルがやっと解消。You Tubeで音楽を聴く。今年初めてだ。 Cesaria Evora Africa Nossa https://www.youtube.com/watch?v=QH1UG6V7iiY Himari 8歳さんが弾くツィゴイネルワイゼンが凄い(サラ・サーテ)あの感動のシーンを審査員の拍手の…

一級品 二級品(閑人亭日録)

昨日は見なかったが、このひと月あまり、北一明の茶盌三点を卓上に並べて鑑賞している。普段鑑賞する茶盌は、二級品と私が見なすもの。傍から見れば一級品或いは三級品と映るかもしれない。北の一級品は、ほとんど鑑賞しない。手にして愉しむには、二級品で…

「萌え~銅版画」(閑人亭日録)

今朝、とんでもない出来事が隣の和室で起こった。朝、カーテンを開いていると、隣の和室からドシンと何かが落下する音。襖を開けて見ると、何とカーテン(レースと遮光)が、カーテン・レールともども落ちている。鉄製のレールを留めてあるネジが全部外れて…

格上 秘蔵品(閑人亭日録)

昨日の日録で思い出した。北一明の盃『北幻想葆光耀変手びねり盃』の箱蓋の裏に「外国著名美術館収蔵作品/格上/北一明」と筆で書かれている。確かに品格もあり高級感がある。しかし、海外の美術館収蔵品は、彼の手元にある時にも見ていない。画集で見るだ…

品がある 品格がある(閑人亭日録)

某現代陶芸家の青磁花瓶を久しぶりに取り出し、床の間に置く。三十年ほど前一目で気に入って購入したもの。すっきり簡潔な造形で、高さ25センチ。肩幅13センチほど。青磁ではやや地味な色合いで、何の装飾もない。ウィスキーの宣伝文ではないが「何も足…

まなざしのゆくへ(閑人亭日録)

昨日味戸ケイコさんからお手紙が届く。去年に続きギャラリー装丁夜話で新作個展の案内など。 https://www.souteiyawa.com/ 5月24、25、26、31日、6月1、2日 12:00-19:00 味戸ケイコさんの絵は、黒鉛筆で描かれた背景の深みがよく話題になる。それは味戸さん…

『日本民衆史 7 甘藷の歴史』(閑人亭日録)

ネット記事 中章宏『「主流」にならないことが大事…日本を代表する民俗学者を突き動かした「傍流のすすめ」』を読んで、宮本常一『日本民衆史 7 甘藷の歴史』未来社一九六二年一〇月一〇日第一刷発行を多分、六十年ぶりに開いた。 https://gendai.media/art…

浮世絵~マンガ~アニメ(閑人亭日録)

江戸時代の狩野派といった政治権力の傘下にあった美術の正統に対し、権力に阿(おもね)ることのない浮世絵版画が庶民の人気を集めた。明治以降、文部省の傘下にある文展が美術の正統に。それに対して庶民相手の風刺画、口絵・挿絵といった木版画印刷が一般の…

内田公雄の小さな絵(閑人亭日録)

収納棚から故内田公雄(きみお)の小さなアクリル画を取り出す。1987年作の絵の大きさは縦22センチ、横16センチほど。額を両手に持って鑑賞。1ミリ幅の二重三重の横線が5ミリ幅で30回あまり引かれた間の5ミリほどの空隙に、〇△×から市松模様、象形文字…

「マンガ 1964年から2024年」(閑人亭日録)

つりたくにこさんのマンガ原画が展示されるポンピドゥー・センターの企画展 https://www.centrepompidou.fr/en/program/exhibitions 「マンガ 1964年から2024年」 特別展示 ギャラリー 2、レベル 6 2024年5月29日~11月4日《 第 9 芸術の特別な祭典として、…

つりた くにこさんのマンガ(閑人亭日録)

故つりたくにこさんのマンガは月刊誌『ガロ』青林堂で親しんでいた。カラッとしたナンセンス・ギャグに惹かれた。次第に不思議な生活が描かれはじめ、何だろう?と疑問が湧いた。それは問いはあるが、答えの出ないマンガ、と今にして思う。さり気なく深い哲…

『原色 日本の美術7 仏画』(閑人亭日録)

『原色 日本の美術7 仏画』小学館 昭和44年11月20日初版、昭和46年4月20日三版が古本屋から届く。『原色 日本の美術』小学館全20冊のうち『7 仏画』『14 宗達と光琳』『18 南画と写生画』の必要な三冊を入手。この三冊の原色図版と、国華社、審美書院の美…

つりたくにこ続報(閑人亭日録)

様々なかたちの薄い白雲が抜けるような青空に棚引いている。いかにも五月晴れ。心地よい風。東京は雨柱とか。 マンガ家故つりたくにこの夫、高橋直行氏からショートメール。《 現地時間3日18時10分、Charles de Gaulle空港に到着、直ちに美術館に移送との日…

「味戸ケイコ 逆光の美」(閑人亭日録)

荒天と言いたくなるような天候。家から一歩も出ず、お買いものは明日へ延期。味戸ケイコさんへ手紙を認める。が、やや、貼る84円切手がない。郵便局はまだ開いているが、出る気がしない。明日に延期。 味戸ケイコさんの絵の魅力、いや美の魔力とは何だろう、…

『四季花木圖屏風一雙』(閑人亭日録)

大判の薄い美術本『美術聚英 第十册』審美書院 明治十四年十月十二日發行を開く。編輯兼發行者 審美書院代表者 田島志一。これが田島志一の審美書院で最後に手掛けた本のようだ。『緒方光琳筆四季花木圖屏風一雙』を鑑賞。簡明な解説。《 草木花葉の美を象徴…

同じ命日(閑人亭日録)

唐十郎と寺山修司の命日が同じ5月4日とは驚いた。 https://news.yahoo.co.jp/articles/9e0465acb57199a17721bfb37ad1111f4acb2d32 1970年前後、アングラ劇団の双璧として状況劇場と天井桟敷が競い合っていた。新宿花園神社の状況劇場、渋谷駅南、東横線から…

可能性のエネルギーを内蔵した美(閑人亭日録)

中国官窯の陶磁器は格調高く、意義正しい正式な礼装を感じさる。そこには一分の隙、崩しも見られない。中国人にとっては左右対称、正円、正四角等、かっちり、きっちりが価値観の軸をなすように思われる。対して北一明の茶盌は、そこからやや外れている(崩…

燦然たる耀変の輝き(閑人亭日録)

清楚な和室は五月の爽やかな朝の光が射し、レースを透過した光は燦然と輝く。和室に柔らかに散乱する朝の光がこんなに美しいとは。格別に気持ちの良い目覚めを迎えた。午前七時、卓上の耀変茶盌は一際鮮やかに耀く。目の醒めるような瑞々しい感動が湧く。七…

ポンピドゥー・センターの展示へ(閑人亭日録)

歩いていく範囲に大小いろいろな石碑が立っている。三嶋大社の境内には、入口近くに高さ数メートルの大きな石碑がどーんと立っている。が、通りがかりの参拝客は、何が書かれているのか、おそらく誰もご存じないし、関心もないだろう。かく書いている私も以…

軽快に突き抜ける(閑人亭日録)

汗と涙の苦労の果てについに限界を突破・・・という熱血制作秘話をひけらかす作品には静かに身を引き敬遠するしかない。 北一明の陶芸作品は、どれもが伝統の型枠を軽快に突破している爽快感がある。焼成の苦心苦労の影は、それらからは微塵も感じない。さり…