2017-01-01から1年間の記事一覧
ポール・ヴァレリー23歳の作「レオナルド・ダ・ヴィンチの方法」1894年を『世界の名著 続12 アラン/ヴァレリー』中央公論社1974年初版で読んだ。 《 こういうふうな観察、すなわち通常の思考を、ちょうど半醒半睡の人の夢のごとくにしてしまうこういう精…
美術の範囲は闇雲に拡がっているように思える。では、そんな拡大を続ける美術の核は何だろう。あるいはもう核はないのか。核廃絶は望むところだが、 美術の核の廃絶は、まあ、望まないほうだ。美術の核というよりも、美術の核心は、私は、感性の覚醒、認識の…
昨日の詩「若いパルク」に知らない言葉があった。灌奠(かんでん)。ネットによると。 《 灌奠(かんてん)は、 儀式に際して神々に葡萄酒や油などを捧げるため大地や生贄にそれらを注ぐ神事。お神酒などを注ぐこと、です! 》 「若いパルク」のふりがな「か…
ポール・ヴァレリー四十六歳の出世作、長編詩「若いパルク」1917年を、『世界詩人全集 10 マラルメ/ヴァレリー詩集』新潮社1969年初版の平井啓之・訳で 読んだ。性愛を知り初めた処女パルクの悪夢(ナイト・メア)と淫夢と目覚め。と、要約できようか。始…
ポール・ヴァレリー『ヴァレリー文学論』角川文庫1989年8刷を再読。わからないものもあれば、不同意もある。ふむふむと頷く章句からいくつか。 《 語、調、比喩、思想の転換、調子の転換なぞが何たるかをしらず、また、作品の永続性の組織も、作品の存在理由…
昼過ぎから知人夫妻の家で内輪の忘年会。話題はあちこちに飛び、なかなか興味深い話を聞けた。午後九時帰宅。 ネット、いろいろ。 《 戦後という時代は、団塊と呼ばれるベビーブーム世代が体現していた。だから時代は、彼らの成長や老いとして現れる。例えば…
清水徹『ヴァレリー──知性と感性の相克』岩波新書2010年初版を読んだ。すごく身近な人に感じる。 《 評判というものは、ひとたび定着してしまうと、ひとを盲目にしてしまうものだ。 》 序 7頁 あるある。 《 こういう彼は、じつは生涯に四回以上もの熱烈な恋…
ポール・ヴァレリー『精神の危機』岩波文庫2010年初版の訳者恒川邦夫の解説「ポール・ヴァレリーにおける〈精神〉の意味」は、三十五頁の力作。 《 精神(エスプリ)とは作業である。それは運動状態でしか存在しない。 (一八九六) 》 486頁 《 重大な問題…
ポール・ヴァレリー『精神の危機』岩波文庫2010年初版、後半も読んで読了。慧眼の士だ。再読しなければ、という気力を奮い立たせる本。 《 かの戦争はまだ記憶に新しく、つねに心にかかっている問題ですが、細部に関しては、すでに忘却されてしまっていると…
昨日読んだ泉鏡花『薬草取』は、『日本短篇文学全集 第6巻』筑摩書房1970年初版で読んだ。この短篇、1969年に初刊が出た『豪華版 日本現代文學全集4 泉鏡花集』講談社には収録されていない。一巻本には収録されず、坪内逍遥、尾崎紅葉、広津柳浪とともに『…
昨日の折口信夫『死者の書』から連想した泉鏡花『薬草取』(明治36年)を何度目かの再読。 《 葎の中に日が射して、経巻に、蒼く月かと思う草の影が映ったが、見つゝ進む内にちらちらと紅来り、黄来り、紫去り、白過ぎて、蝶の戯るゝ風情して、 偈に斑々と印…
折口信夫(しのぶ)『死者の書』を読んだ。古文調の文章をどこまで読みこなせたか心もとない。 《 山の躑躅の色は、様々ある。一つ色のものだけが、一時に咲き出して、一時に萎む。そうして、およそ一月は、後から後から替った色のが匂い出て、禿げた岩も、 …
折口信夫(しのぶ)『死者の書』を『ちくま日本文学 折口信夫』筑摩書房2008年初版で少し読んだ。中公文庫版ももっているが、この方が注もあって読みやすい。 「した した した」がずっと気になっていた。冒頭一頁にあるとは。 《 した した した。耳に伝う…
昨日の日録のつながりで篠山紀信『TOKYO未来世紀』小学館1992年初版を再読。写真集だけど再読でいいのかな。写真を見て「筋を読む」から、ま、いいか。 1991年に撮影されたもの。まさしくバブルの絶頂期だ。いや、バブルの絶巓というべきか。その時にし…
光あれば闇がある。闇あれば光がある、か。んなことを思い、宮下規久朗『闇の美術史 カラヴァッジョの水脈』岩波書店2016年初版を取り出し、あちこち再読。 《 光だけでは/ドラマは/生まれない。/闇あれば/こその/臨場感。 》 帯文 《 印象派は、光に対…
昨日取りあげた安藤信哉の絵に、見た限りでは夜を描いた作品は見当たらない。そこでふれていたルノアールもセザンヌも、私の知る範囲では夜の絵は知らない。 モネは日没を描いたが、夜は描いたかなあ。四人とも夜の絵があるとしても、一級の作品か疑わしい。…
ポール・ヴァレリー『精神の危機』岩波文庫2010年初版、表題作「精神の危機」を再読。内容が深いのでじっくり腰を据える。よって読むのが遅い。 昨日もきょうもたった一篇。けれども一冊の本を読んだくらいの重量感というか疲労感。いや、頭脳の危機か。あり…
ポール・ヴァレリー『精神の危機』岩波文庫2010年初版を、半ば近くの「精神の自由」を読みかけのまま途中まで読んでその後忘れていたらしい。その冒頭。 《 人々(エスプリ)の関心を「精神(エスプリ)」の運命に、ということは彼ら自身の運命にということ…
昨日家に籠もって本を根詰めて読んでいたので昼前、ブックオフ三島徳倉店へ自転車を走らせる。大林太良『葬制の起源』中公文庫1997年初版、木村泰司 『名画の言い分』ちくま文庫2011年初版、清水潔『殺人犯はそこにいる』新潮文庫2017年17刷(二重カバー)、…
松岡正剛『擬( MODOKI )』春秋社2017年初版を読了。 《 多言語文化にはそれなりの関心をもち、多少の努力もしたつもりだが、どこかで諦めた。そのうち「小さなこと」や「少なめ」のほうが大きく感じられたり、 かえって「足りなさ」の自覚のほうが豊かに感…
松岡正剛『擬( MODOKI )』春秋社2017年初版を読み進める。 《 なぜそうなったのか。松本(健一)は天皇に姓がなかったからだという説明をしたが、これは日本では天皇家に易姓革命をもたらさないようになっていたからで、 姓がなければ皇位の簒奪もおこらな…
松岡正剛『擬( MODOKI )』春秋社2017年初版を読み進める。《 歴史を考えるのはかなりアクロバティックなことである。われわれは巨大な時空の袋のどこか片隅のくぼみにいて、その袋の全体の歴史的形状を云々しようと するのだから、これは身の程知らずが歴…
松岡正剛『擬( MODOKI )』春秋社2017年初版を読み進める。いやあ、興奮する。ワクワク。 《 このとき蕪村は覚悟して芭蕉を継承し、芭蕉の二つのヒントを正面に掲げることにした。ヒントは一に「言ひおせて何かある」、ニに「高くこころを悟りて 俗に帰るべ…
翻訳本を開いたが、文章にいまいち乗れず後回し。白一色の装幀が印象深い松岡正剛『擬( MODOKI )』春秋社2017年初版を手にする。副題「『世』あるいは 別様の可能性」。冒頭から惹き込まれる。 《 社会にはいろいろな継ぎ目があって、この継ぎ目にかかわる…
寒いはずだ。今朝の最低気温0.6度。いよいよ真冬の装備。自転車で廻る意欲が湧かない。 きょうは用事はないだろうなあ、と思った矢先、電話。静岡朝日テレビの取材でグラウンドワーク三島事務所へ昼に来てほしい、と。三島駅南口東街区再開発問題。 http://w…
一昨日の授賞式会場ののエントランスや廊下には、有名な日本画家の額装された20号〜50号ほどの日本画が壁面を飾っていた。お、これは横山大観(富士山)、 これは川合玉堂(山村風景)と、その画家の商標のような絵をじっくり見て、欲しいと思った絵は一…
昨日午後、授与式時間まで余裕があったので、お茶の水駅で下車、神保町へ坂道を下ってゆく。殆どの店が代わっていて、今浦島の気分。古本屋の店頭均一本を 眺めながら行く。大雲堂書店の店頭で下村明『風花島(ふかとう)殺人事件』戎光祥(えびすこうしょう…
画家の上條陽子さんから田川市美術館で六月から七月にかけて開かれた『光は見えるか 上條陽子とパレスチナの子どもたち』展の図録を恵まれる。 上條さんの展示品には、K美術館で2002年に展示した『記憶の塔』2000〜2016年も。 http://web.thn.jp/kbi/zakki3…
徳永恂(まこと)『現代思想の断層──「神なき時代」の模索』岩波新書2009年初版を読了。 《 哲学者たちは「相互主観性」などという便利な言葉を創り出して、容易に語り手と聞き手の間の断層を渡ってしまう。しかし、その断層に橋渡しするためには、 実は語り…
徳永恂(まこと)『現代思想の断層──「神なき時代」の模索』岩波新書2009年初版を少し読んだ。 昨夕、某画家の作品を遺族へ返却。長年手間暇かけてきたささやかな事業を終了させた。最近遺族との間に生じてきた齟齬の修復は、もはや不可能と判断。 東京新聞…