2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

リズム、リズム

昨日引用の大岡信の「「現代詩」の成立──「言語空間」論──」から。 《 イメージは対象物の不在によって成りたつものである。「言語空間」というとき、人が直観的に感じとる「空間」とは、つまりこのイメージの世界であろう。 それはすでに、肉眼に見え、肌で…

「中原中也論」ほか

一昨日に続いて大岡信『詩人の設計図』書肆ユリイカ1958年を読み進める。「中原中也論」。すごく鋭く深く、今も新鮮な論述だ。 《 中也のうちに、おのれ自身に甘えた詩人を見るなら人はあやまるだろう。しかしまた、おのれ自身を超越すようとした詩人を見る…

小原古邨

ヤフーで小原古邨(おはら・こそん)を検索すると、約345,000件も出る。信じがたいことだが、2000年ではたった18件しかなかった。ウィキペディアには 当然未掲載だった。戦後、文字通り忘れられた日本画家、木版画絵師だった。K美術館の紹介ページは数年前…

「詩人の設計図」ほか

大岡信『詩人の設計図』書肆ユリイカ1958年収録の表題作「詩人の設計図 現代詩はなにをめざすか」を『大岡信著作集 第四巻』青土社1977年初版で読んだ。これまた脱帽。 濃密で勢いのある文章に呑まれ、一気に読んだ。ま、たった十五ページだけど。二十代半ば…

審美書院 VS. 國華社

6日と10日に記したが、審美書院の画集二冊、『光琳派畫集』明治36(1903)年初版、『文人畫三大家集』明治42(1909)年初版を合計、送料込み 二万一千六百円で入手できて明治期の木版画探求は一件落着、と思っていた。そんな折、高級美術雑誌『國華』…

大岡信作品の評価

23日に大岡信の文学界の受容、評価をちょっと調べたが、他の本にも当ってみた。『現代日本文學大系 97 現代評論集』筑摩書房1973年初版は、 柳宗悦、谷川徹三、三木清と始まって橋川文三、色川大吉に終わる三十四名に大岡信の名はない。これは年齢制限か…

『現代詩試論』

『現代詩試論』後半も読了。凄いわ。私が大学を卒業してから数十年考えてきた到達点を、大岡信は二十代前半ではるかに凌駕している。才能の差だねえ。 《 われわれは世界を感じとる度合に応じて自己を感じとる、という一つの断定の中には、意外に貴重な発見…

「詩の必要」「詩の条件」

昨日話題の『現代詩試論』に収録された、表題作に続く「詩の必要」「詩の条件」を読んだ。 《 詩人自身の感動の範囲を拡大するとともに、読者の感動の範囲をも拡大せねばならぬ。つまり、読者の意識下に漠然と可能性のままで わだかまっている感性を、詩の言…

「現代詩試論」

大岡信の初出版『現代詩試論』書肆ユリイカ1955年収録の表題作「現代詩試論」を、『大岡信著作集 第四巻』青土社1977年初版で読んだ。 一読驚愕。「現代詩試論」は1953年の発表。執筆はなんと二十二歳。うそだろう、と思わず唸った。ぐいぐいと押し進む論述…

『 SIMETRISITI 』

マレーシアの歌姫シティ・ヌルハリザ SITI NURHALIZA の新譜『 SIMETRISITI 』2017年が届く。シティならではの天翔け、急転水面を滑空する、 濃淡強弱自在の情感溢れる歌唱。それをバックアップするゴージャスな伴奏陣。最近このような豪華な歌伴を耳にした…

『古書店主』

マーク・プライヤー『古書店主』ハヤカワ文庫2014年3刷を読んだ。誠に時季にかなった消夏法だった。初冬のパリを舞台にしたサスペンス小説。 せわしくない展開が嬉しい。ここが評価の割れるところだろう。「訳者あとがき」から。 《 物語はセーヌ河の左岸で…

「思い出すために」

昨日の『プレヴェール詩集』から寺山修司を連想する。例えば寺山の詩「思い出すために」。 《 セーヌ川岸の 手まわしオルガンの老人を 忘れてしまいたい 青麦畑でかわした はじめてのくちづけを 忘れてしまいたい パスポートにはさんでおいた 四つ葉のクロー…

『プレヴェール詩集』

『プレヴェール詩集』小笠原豊樹訳(岩波文庫)が出た。小笠原豊樹訳の『プレヴェール詩集』は、河出書房から1967年に出たポケット版 世界の詩人シリーズを持っている。二篇。 《 腹ぺこで 道に迷って 体は冷えて ひとりぼっちで 一文なしの ちいさなむすめ …

「真実でも事実でもなくて切実」

祭りは終えた。映像で振り返る。 《 さて、三島大祭り最終日です! 雨降らなくて良かったけどアチ〜(^^;; 》 オレンジ村 https://twitter.com/web89019725/status/898112818217598976《 「みしまサンバパレード」(復路) 2017 08 17 》 https://www.youtube…

夏祭り最終日/ 轟夕起子

朝、窓ががさがさ音がする。ゴキブリでもいるのかな、とカーテンを慎重に引くと、アブラゼミ。昨日少し開けた窓から入ったのだろう。 ひょいっと飛んでいった。 昼前用事を済ませて広小路駅まで来ると、駅前の歩道に一台、タクシー乗り場の出口脇に一台、そ…

夏祭り中日/象徴思考

祭りの後はゴタゴタが起るのはある意味必然。昨夜は広小路交番に三台のパトカーと覆面パトカーがサイレンを鳴らして集結。 昼前、友だちを迎えに西へ歩いていくと、交差点脇に正面衝突の軽ワゴン車と小型乗用車。双方とも前面が大破。交差点の角にガラス片ら…

夏祭り初日/『黒衣の短歌史』

一昨日参加した集会『三島駅南口再開発を「即延期」に・「市民集会」』の模様がウェブサイトに公開された。 http://www.gwmishima.jp/modules/information/index.php?lid=1701&cid=45 三島の夏祭り(今年から大祭りに呼称変更)が始まった。昨晩はお囃子の練…

『内臓とこころ』つづき

三木成夫『内臓とこころ』河出文庫2013年初版、後半も再読、一巻読了。 《 うるしの技法で、塗っては乾かし、塗っては乾かし、何回も何回も積み重ねてゆ方法があります。宇宙リズムの生命記憶も、 このような構造を持っているはずです。つまりこの「三十億回…

『出没!アド街ック天国』

昨日午後、とある集まりの休憩時間を抜け出し、源兵衛川に涼みに来た友だちが休んでいる店へ自宅から『文人畫三大家集』審美社 明治42(1909)年初版をえっこら持参。短い時間だったが、木版画を見てもらった。最後のほうの頁の渡邊崋山「寒林富岳圖」を最…

『内臓とこころ』

三木成夫『内臓とこころ』河出文庫2013年初版、前半を再読。《 つまり、”食欲”という、ひとつの内蔵感覚をとっても、遠い宇宙の彼方との共振によって、支えられてことがよくわかります。 胃の内外の出来事だけで起こるものではけっしてない。いいかえれば内…

カセット・テープ・デッキ/浅川マキ

昨夜は明日の用事がない、いわば休日の前夜。いつもならCDをかけるのだけれど、昨夜は録音した音楽カセット・テープを聴いた。 録音したテープは全部で200巻ある。考えずに取り出したテープのB面をかける。曲目は矢沢永吉「共犯者」「RISKY LOVE…

『光琳派畫集』

ネット注文した『光琳派畫集』審美書院明治36(1903)年初版が届く。一万八百円+送料八百円、計一万一千六百円。 6日の『文人画三大家集』審美書院明治42(1909)年初版より一回り小さい。といっても大型本。多色摺り木版画七枚。この二冊で 審美書院…

『被爆少女の絵本』

一昨日味戸ケイコさんへ手紙を投函したが、昨日味戸さんから手紙が届いた。行き違い。 《 被爆少女の絵本にかかっているあいだ 何ひとつ他のことは考えられず行動も出来ずで 》 《 あくまでも少女の視点からだけ描きたくて ドキュメンタリーのように爆風に飛…

『 TOKYO GRAFFITI 』

先だって招かれた、伊豆の国市在住の現代画家、ヒロ中島、けいこご夫妻から恵まれた隔月刊雑誌『 TOKYO GRAFFITI 』8月号グラフィティ。 その企画「タイムスリップ写真館」に1985年ニューヨーク滞在時と2017年現在の写真が掲載。中島けいこさんの「今つらい…

「椛山訪雪図」

米澤穂信が泡坂妻夫「椛山訪雪図」を《 何より愛していて、 》と書いている。初出の雑誌『幻影城』の別冊増刊号で読んでじいんと 心打たれた。私も愛して止まない短編だ。直木賞候補になったと記憶する。昨日話題の『文人画三大家集』収録、渡邊崋山の絹本墨…

『文人画三大家集』

昨日古本屋から届いた『文人画三大家集』審美書院明治42(1909)年初版。背丈48センチ横33センチの大判堅表紙は、布(絹) 地に木版画装、三方金。重くてビックリ。下手に持つとぎっくり腰になりそう。与謝蕪村、田能村竹田、渡邊崋山のコロタイプ印刷…

『ブッダのことば』

『ブッダのことば』中村元・訳岩波文庫を少し読んだ。「第一 蛇の章」。 《 九 走っても疾過ぎることなく、また遅れることもなく、「世間における一切のものは虚妄である」と知っている修行者は、 この世とかの世をともに捨て去る。──蛇が脱皮して旧い皮を捨…

文庫版『カスバの男』

本棚を流していて大竹伸朗の『カスバの男』集英社文庫2004年初版を見つけた。買った記憶はないが。元本にはなかった銅版画が 加えられている。子どもの落書きのようで、見事な線描(エッチング)だ。角田光代の解説が気にいった。なにせ。 《 無知な私は、こ…

案内は疲れる

朝、韓国からの視察者二十人ほどを、源兵衛川へ案内。川へ入ってえらく喜ぶ。それから市長への表敬訪問で市役所へ案内。 私も表敬訪問に同席することに。こういうのは苦手。 午後はまったり休息。やれやれ。 ネット、いろいろ。 《 第3回(全4回)一発ですべ…

『微光のなかの宇宙』つづき

司馬遼太郎『微光のなかの宇宙 私の美術観』中公文庫1991年初版、後半も読んで読了。明末清初の水墨画人、八大山人は知らなかった。 無知を恥じず、喜ぶ。まだまだ未知の凄い画人がいる。作品を見る楽しみが増えた。 《 ”日本”というのはかれにとって、浮世…