2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧
古川日出男『聖家族(上)』新潮文庫2014年初版を読んだ。長い長い物語の前半だ。鍛錬して殺人兵器にまで肉体を改造した 狗塚牛一郎、狗塚羊次郎兄弟を軸に東北地方を舞台に物語は進む。冒頭、弟の狗塚羊次郎は殺人犯として拘置所で死刑を待つ。 舞台と人物…
塚本邦雄監修『現代詩コレクション』書肆季節社1990年初版を開き、二篇の「腐刻画」を読む。 安東次男「腐刻画」。詩の後に左下に「(十月)」と記された「腐刻画」の絵。それはなにも描かれていない、白紙。 一つの骨格に浸された距離のない物質 水面に 引…
塚本邦雄監修『現代詩コレクション』書肆季節社1990年初版を開き、八○○頁を超える詩篇から既知未知の詩人の詩を 気の向くままに拾い読み。 澤村光博「盗まれた泥棒」全編。 その時、窓は黒い鏡のようだった。鏡のなかへ身を逆さまに、 彼奴(きやつ) はする…
昨日の大野更紗『困ってるひと』ポプラ社文庫から吾妻ひでお『失踪日記』イーストプレス2005年を連想。この帯には。 《 「実体験の凄さはもちろん、絵も含めた『漫画作品』として完成度が高く本当に面白い。多くの人に読んでほしい、 傑作だと思います」 と…
大野更紗『困ってるひと』ポプラ社文庫2012年初版を読んだ。この難病闘病記、悲惨極まりないが笑いを誘う。驚嘆。 《 群像編集部編『21世紀の暫定名著』で挙げられている「名著」のリスト 》 http://amberfeb.hatenablog.com/entry/2017/02/02/184959 上記で…
朝、ギャラリー・カサブランカで展示された味戸ケイコさんの絵を、オーナーの勝呂さんから受け取る。 午後、知人の車に同乗、新装なった熱海市のMOA美術館の「奇想の絵師 岩佐又兵衛 山中常盤物語絵巻」を見に行く。 《 写り込みのない低反射高透過ガラス…
昨日のM・ウエルベック『服従』の余韻が冷めやらぬうちに、フランスの大統領選挙は予想通り決戦投票へ。 どうなることやら。つづいて韓国か。 ネット、いろいろ。 《 首相官邸の危機管理センターってのは地下にあるそうで、当然ながら立派なシェルターなの…
M・ウエルベック『服従』河出文庫2017年初版を読んだ。2022年のフランス大統領選挙前後を描いた、四十代半ばの 大学教員の一人称小説。2022年、政治体制はイスラーム政権に変わる。そして「服従」の意味が次第に明らかになる。 巷間言われているように、こ…
昨日午後、某会合まで時間があったので本屋へ寄リ、雑誌〜文庫と目を移してゆき、『服従』河出文庫ニ○一七年四月三○日発行 に目が留まり購入。帯には「緊急文庫化」。未知の著者(M・ウエルベックだった)だが、下記で気になっていた。 《 群像編集部編『21…
伊良子清白『孔雀船』岩波文庫1988年7刷を読んだ。長短十八篇の詩から成るその多くの行が五音七音の五調七調で 構成されている。長編詩「夏日孔雀賦」の第一連。 園の主に導かれ そののあるじに みちびかれ 庭の置石石灯籠 にはのおきいし いしどうろ 物古る…
椹木野衣『アウトサイダー・アート入門』幻冬舎新書2015年初版、いろいろ考えさせる論考だ。一昨日昨日引用したように、 過酷な運命を負ったアウトサイダーの典型的なアートが論じられているが、それを身近なアートに引きつけて自分なりに考える。 例えば陶…
椹木野衣『アウトサイダー・アート入門』幻冬舎新書2015年初版、読了。あらためて瞠目。歴史、権力という広い視野から 美術を俯瞰、位置づけている。「出口なを、王仁三郎」は白眉だろう。 《 こうした過去が清算されぬ状況では、王仁三郎の残した絵や彫刻、…
最近アウトサイダー・アートが周囲で話題になり、椹木野衣『アウトサイダー・アート入門』幻冬舎新書2015年初版、前半を再読。 闊達な文章にぐいぐい惹き込まれる。 《 少なくとも現在、公的な美術館で長く後世に伝えるために保存・公開されている近現代美術…
昨日の東京新聞に千野帽子『人はなぜ物語を求めるのか』ちくまプリマー新書の紹介文。その冒頭。 《 物語とは「時間の前後関係のなかで世界を把握する」こと。 》 絵画とは空間のなかで世界を把握することおよび時間の前後関係のなかで世界を把握することの…
老若男女を問わず「作品を見て欲しい」と言われる。先だって年上の女性画家と一緒に、彼女の女友だちの新作絵画を拝見。 ほぼ完成に近い洋画の群像画について画家と二人で色合いの強弱や輪郭線のことなどを語った。昼食をはさんで五時間も談笑。 先だってそ…
午前午後、清住緑地南部の林の伐採した木や蔦の搬出、チップ化の作業に参加。桜は落下盛ん。花吹雪の元での作業。 午後四時終了。ふう。 清住緑地の湧水の小川では子どもたちが裸足で入ってタモで魚を取ろうとパチャパチャ元気に動き回っている。親がそれを …
堀江敏幸『雪沼とその周辺』新潮社2003年初版を読んだ。七短篇からなる雪沼とその周辺。第一篇「スタンス・ドット」に まず感嘆。名短篇だ。その夜閉店するボーリング場が舞台。ボーリングには無縁だったので、スタンス・ドットも知らないが、 門外漢にもす…
高橋源一郎『日本文学盛衰史』講談社2001年初版、論述的な記述から。坪内逍遥と二葉亭四迷(ふたばてい・しめい)。 《 既に文壇の大家であったにもかかわらず、逍遥はその年下の無名の青年の意見に耳を傾けた。逍遥が目指していたのは、 自ら名付けた通り小…
高橋源一郎『日本文学盛衰史』講談社2001年初版を読んだ。あの石川啄木が渋谷のブルセラショップのアルバイト店長! なんと軽佻浮薄(褒め言葉)、折り紙展開図のような大風呂敷(褒め言葉)の、なんてすっ飛んだ小説だろう。まさしく 文学の冒険。 《 十一…
昨日行ったブックオフ長泉店の告知。閉店時間を午前零時から午後十一時に繰り上げる、と。自宅の前の庄や広小路店は 先週、外観を改装したが、午後十一時には閉店。ネットでもそうなっていた。以前は午前三時頃まで開いていた。客離れと 人手不足の双方なの…
昼前、源兵衛川中流部、源兵衛橋〜下源兵衛橋の茶碗のカケラを拾う。一時間ほどで十キロを軽く超えて終了。 さすがに大きなものは減った。 午後、ブックオフ長泉店へ自転車で行く。文庫を四冊。高橋輝次『書斎の宇宙』ちくま文庫2013年初版、丸谷才一 『犬だ…
《 では、美とは何。美は洗練にもグロテスクにもまたがっている、それらを超越した観念といえるだろう。 》 と6日に記した。美とは何か。定義づけることは不可能というか無理筋な気がする。定義する先から美はすり抜けてゆく。 大岡信だったと記憶するが、…
内田樹『日本辺境論』新潮新書2009年4刷は、腰を据えて考えさせる論述が何箇所もある。一晩たってから反芻。その一つ。 「 III 『機の思想』」から。 《 「石火之機」とは「間髪を容れず」ということです。 》 172頁 《 武道の目的は「敵に勝つこと」ではあ…
内田樹『日本辺境論』新潮新書2009年4刷を読んだ。平明な論述だが、じつに刺激的。興奮。 《 とりあえず今ここでつよい権力を発揮しているものとの空間的な遠近によって自分が何ものであるかが決まり、 何をすべきが決まる。 》 43頁 《 「何が正しいのか」…
川上弘美『センセイの鞄』、絲山秋子『袋小路の男』、小川洋子『博士の愛した数式』、多和田葉子『雪の練習生』、 笙野頼子『金毘羅』、桐野夏生『グロテスク』と、女性作家の小説を集中的に読んだ。これらは群像編集部編 『21世紀の暫定名著』のリストで挙…
桐野夏生『グロテスク』文藝春秋2003年初版を読んだ。怪物的な美貌の妹への羨望と屈辱感が嫌悪と嫉妬へ反転、異常に肥大(グロテスク)した悪意と蔑視を、姉は赤裸々に 語る。そして妹ら関係者たちのやはり赤裸々な告白。まさしくグロテスク。いささか疲れる…
ブックオフの創始者はなぜブックオフなる店舗を思いついたかを語っていた記事が今も印象深い。彼は古本には興味がなかった。 古本屋のバラバラな値付けに疑問を抱き、刊行からさほど過ぎていない本は半額、かなり過ぎた本は100円、でいいじゃないかと 思った…
世の中に酒と女は敵(かたき)なりどうぞ敵にめぐりあいたい 蜀山人 上の狂歌は大田南畝、蜀山人の作だが、なにかにつけ思い浮かぶ。私は酒と女にはめっぽう弱い。好きだけど。 一応辛口の純米日本酒、フルボディの赤葡萄酒それにウィスキィ、それから最近は…
笙野頼子『金毘羅』集英社2004年初版を読んだ。金毘羅の一代記いや語り手は四七歳だから半生記か。なんとも奇妙で 壮絶な小説だ。冒頭。 《 一九五六年三月十六日深夜、私は仮死状態で生まれました。産声を挙げたのは次の日の朝でした。しかしそういう言い方…
『現代詩手帖』1979年5月号思潮社、特集「ライト・ヴァース」。巻頭は谷川俊太郎、川崎洋、新倉俊一の鼎談。 川崎 ライト・ヴァースというのは、ハイ・ヴァースがあって、それでライト・ヴァースなんですね。 新倉 そうです。ロー・ヴァースというか。 川崎 …