2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『明治の文化』四

色川大吉『明治の文化』岩波書店1970年初版を少し読み進める。 《 もしも自由民権運動が、少なくとももう十数年間、挫折することなくもちこたえられていたとしたら、おそらく日本の知識階級の成立のしかたや体質は まったく違ったものになっていたであろう。…

『明治の文化』三

色川大吉『明治の文化』岩波書店1970年初版を少し読み進める。 《 それでは、なぜ新体詩調の(森)春涛派が当時の革命家たちに喜ばれず、かえって”保守派の逸民”の(大沼)沈山の方が、細野、石坂、深沢はじめ、 多くの地方民権家にむかえられたのか。すでに…

『明治の文化』ニ

色川大吉『明治の文化』岩波書店1970年初版を少し読み進める。 《 こうした明治の青年たちのバラエティに富んだ生き方を、私たちは何百例となく追跡してきたが、その結末の多くは、誠実な奮闘的生き方にもかかわらず、 ほとんどが陽の目をみない敗残者として…

『明治の文化』

色川大吉『明治の文化』岩波書店1970年初版を少し読んだ。 《 天皇制が複合的な価値の大系としてよりも、「価値を相殺する一種の装置」として、いや民衆の意識世界を気体のように包みこむ怪物的な存在として 拡充しえたのは、私は明治も末期以降、大正・昭和…

『日本の歴史22 大日本帝国の試練』七

隅谷三喜男『日本の歴史22 大日本帝国の試練』中央公論社1976年38刷を読了。 《 日本がこのように韓国の支配・領有に執心してきたのは、なぜだろうか。一つにはいうまでもなく軍事的要求による。ロシアの南下を阻止し、日本の安全を 確保するためには、朝…

『日本の歴史22 大日本帝国の試練』六

隅谷三喜男『日本の歴史22 大日本帝国の試練』中央公論社1976年38刷を少し読んだ。 《 こうして財閥は恐慌をへるごとに肥えふとってきた。とくに日露戦争後の不況は、期間も長く、打撃も大きかったので、財閥の手は多方面に伸びた。財閥は 日本の中心的部…

『日本の歴史22 大日本帝国の試練』五

隅谷三喜男『日本の歴史22 大日本帝国の試練』中央公論社1976年38刷を少し読んだ。 《 ところで、国民の底流にあった非戦論や厭戦気分は、『平民新聞』その他の反戦論とは結びつかずに、戦争熱のほうにさらわれてしまったのである。反戦論は 理論と情熱ば…

『日本の歴史22 大日本帝国の試練』四

隅谷三喜男『日本の歴史22 大日本帝国の試練』中央公論社1976年38刷を少し読んだ。 《 この戦闘で日本軍の死傷三千五百にのぼったが、ここで日本軍が初めてぶつかり、その威力のほどを思い知らされたのが報告にある機関砲、すなわち機関銃である。 》 「日…

『日本の歴史22 大日本帝国の試練』三

隅谷三喜男『日本の歴史22 大日本帝国の試練』中央公論社1976年38刷を少し読んだ。 《 日本の伝統的な社会のなかでは、国や家がすべてであった。世捨て人にでもならぬかぎり、個人はそのメンバーとして生きることしか許されず、そのメンバーとして 社会的…

『日本の歴史22 大日本帝国の試練』ニ

隅谷三喜男『日本の歴史22 大日本帝国の試練』中央公論社1976年38刷を少し読んだ。 大通りは昼前からハロウィンの歩行者天国。午後二時からのパレードの時には雨がしばし止む。賑やかな子どもの声。さて、台風は。 ネット、いろいろ。 《 37 Trees That Lo…

『日本の歴史22 大日本帝国の試練』

隅谷三喜男『日本の歴史22 大日本帝国の試練』中央公論社1976年38刷を少し読んだ。 《 昨日まで藩閥政治を攻撃し、その提出する軍備拡充の予算を遠慮会釈なく削減し、政府と衝突をくり返してきた野党も、ひとたび開戦となると、もろ手をあげて その藩閥政…

『日本の歴史21 近代国家の出発』六

色川大吉『日本の歴史21 近代国家の出発』中央公論社1980年45刷を読了。1894(明治27)年夏の日清戦争勃発でこの巻は閉じられる。 《 十五年十一月に秘密にだされた軍備拡張の詔勅には、朝鮮を「独立国」とするためには、「隣国ノ感触ヨリ或ハ不慮ノ変アル…

『日本の歴史21 近代国家の出発』五

色川大吉『日本の歴史21 近代国家の出発』中央公論社1980年45刷を少し読んだ。読むのが遅い。理解が遅いから。もあるけど、気が滅入ってくる。 《 読者はきづかれたことであろう。柳田(国男)の本にでてくる人民は、民権運動にあらわれる人民とは違う、と…

『日本の歴史21 近代国家の出発』四

色川大吉『日本の歴史21 近代国家の出発』中央公論社1980年45刷を少し読んだ。 《 この自由党は、十四年の政変で政府を追いつめた都市反対派の主力を包含していない。 》 「自由党は抵抗する」 256頁 《 そのため、自由党がやがて内部の弱点からどんなによ…

『日本の歴史21 近代国家の出発』三

色川大吉『日本の歴史21 近代国家の出発』中央公論社1980年45刷を少し読んだ。 《 (明治)十五年ニ月、かれ(岩倉具視)が内閣に建議した皇室財産設定にかんする意見書は、その第一弾とみられる。 これは、国民の全財産と大差ないほどの皇室の財産を大至…

『日本の歴史21 近代国家の出発』二

色川大吉『日本の歴史21 近代国家の出発』中央公論社1980年45刷を少し読んだ。明治十年代も波乱の連続だ。 《 一枚岩の明治政府どころか、すべてがこうした調子で、なにかというと武力で事を決しようとする、荒っぽい時代だったのである。 》 「大隈財政」…

『日本の歴史21 近代国家の出発』

色川大吉『日本の歴史21 近代国家の出発』中央公論社1980年45刷を少し読んだ。明治時代に伝染病がこれほど蔓延していたとは。 《 明治十九年(一八八六)、この一年間に、わずか四種の伝染病だけで、日本はじつに十四万六千人以上の尊い人命を失った計算に…

『灰色の眼の女』

神西清『灰色の眼の女』中公文庫1976年初版、表題作と「雪の宿り」を読んだ。ふと手にした安原顕・編『ジャンル別 文庫本ベスト1000』学研M文庫2000年初版を 開いて最初の堀江敏幸・編「現代小説(日本篇)ベスト50」を見ると、49番に神西清『灰色の眼の女…

唐物から和物へ

『BRUTUS』マガジンハウスの特集「国宝、国宝。」、茶碗の項から。 《 応仁の乱以前の「唐物ファースト」時代を代表する茶碗が曜変や油滴などの天目茶碗であるとすれば、その次の時代の先駆けとなったのは、高麗茶碗だろう。 時代的には高麗時代を過ぎ…

完全な対称性、完全な円形

昨日の国宝曜変天目茶碗の解説の続き。《 南宋時代の一時期にだけ焼かれた理由や、日本のみに現存して中国には残っていない理由も、いまだ謎のまま。 》 34頁 その理由として以前から言われていることが、中国の美意識──対称性への執着。吉田秀和『調和の幻…

知られざる作品

昨日買った『週刊 ニッポンの国宝100 4』小学館、国宝曜変天目茶碗の解説。《 宇宙を映したような見込み 》 30頁《 銀河のような深海のような唯一無二のきらめきです 》 30頁《 のぞきこんだ瞬間、暗闇ときらめきが混じり合う世界に吸い込まれる──そんな…

国宝、国宝

近くの本屋で『週刊 ニッポンの国宝100 4』小学館と『BRUTUS 特集 国宝。』マガジンハウスを購入。前者は曜変天目茶碗が目当て。解説には 新味は何もない。よくいえば穏当にまとめている。昔、静嘉堂文庫でこの曜変天目茶碗を鑑賞したが、こんなも…

椹美術

椹木野衣『震美術論』美術出版社2017年は、「新美術論」だなと思ったが、本題とは無縁の連想に遊ぶ。震美術論から論を外して「震美術」。既成の美術史、分野を バラバラにして。「神美術」、「信美術」、「審美術」、「進美術」、「深美術」の分野、昨品もあ…

『明治維新と西洋文明』三

田中彰『明治維新と西洋文明─岩倉使節団は何を見たか』岩波新書2003年初版を読了。最終章「七 『米欧回覧実記』と『文明論之概略』」では、久米邦武と 福沢諭吉そして中江兆民の三者の世界観、歴史認識の違いへの論及が簡明にして的確。視野が広く射程が長い…

『明治維新と西洋文明』二

田中彰『明治維新と西洋文明─岩倉使節団は何を見たか』岩波新書2003年初版を少し読んだ。あと少しで読了だが、明日へ持ち越し。 朝雨が止んで晴れたので源兵衛川中流部、水の苑緑地下流から一本松までのヒメツルソバを抜く。土壌が雨水を含んでいるので根ま…

『明治維新と西洋文明』一

田中彰『明治維新と西洋文明─岩倉使節団は何を見たか』岩波新書2003年初版を少し読んだ。 《 この「内なる」開国、つまり欧米の近代文明・文化を、いかに日本が主体的に受けとめ、また、受け容れようとしたか、あるいはしなかったのかを 念頭におきつつ、明…

『【新青年】版 黒死館殺人事件』

昼前、小栗虫太郎『【新青年】版 黒死館殺人事件』作品社2017年初版帯付を近くの本屋で受け取る。 http://www.sakuhinsha.com/japan/26467.html どこへも立ち寄らず帰宅。ふう。ワクワク。重版情報では早くも重版決定。仲正昌樹『〈ジャック・デリダ〉入門講…

『明治維新』六

井上清『日本の歴史20 明治維新』中央公論社1980年48刷を読了。 《 難局に当ってみじんも責任を回避しようとせず、いつでもみずから進んで全責任を負う大久保の政治的責任感の強さは、かれの政策に共鳴すると否とを問わず、 またかれの人がらない親しむと…

『明治維新』五

井上清『日本の歴史20 明治維新』中央公論社1980年48刷を少し読んだ。 気が滅入ってくるな。 山田風太郎『人間臨終図巻 II 』徳間文庫2001年初版、 「六十六歳で死んだ人々」を開く。山田風太郎の緒言。 《 いかなる人間も臨終前に臨終の心象を知ることが…

『明治維新』四

井上清『日本の歴史20 明治維新』中央公論社1980年48刷を少し読んだ。 《 西郷・板垣らの征韓論は、このように陸海軍の当局すらなんら討議に関係せず、もっぱら参議とその腹心の部下らの間だけで画策されたということ自体のなかに、 このときの征韓論の秘…