午前中は源兵衛川を愛する会の月例清掃。中流域の伸びすぎたジュズダマを刈る。水は冷たくて気持ちいいけれど、猛烈な日射に汗は滝のよう。カワセミがつがいで飛んでいく。正午に開けるとすぐに親子の来館者。味戸ケイコさんの『あのこがみえる』が、その昔心に刻まれたお父さん。学校の授業で『わたしのいもうと』に出合った女子高生の娘さん。味戸さんに電話して取り次ぐ。とても喜んでいた。
E・C・ベントリー『トレント最後の事件』創元推理文庫1973年再版を読んだ。1913年の作品。約百年前だ。中島河太郎の解説から。
《 たしかに従来の推理小説の型をまったく破った画期的な作品であり、その真価は徐々に識者に認識せられ、現代では近代推理小説の嚆矢としての栄冠をいただくにいたった。》
同感。前半の手際よい推理が後半にいたって反転する構成は、なかなか見事。それに恋愛沙汰がからんで、解決を一層複雑にする。それぞれの人物造形が鮮やかで深い読後感。
《 しかも推理小説においては不可能と思われた犯罪ないし探偵と恋愛との有機的な結合に見事に成功したのである。ことに充分に考え抜かれたトリックは最後の二章で心憎いまでの驚きを用意している。登場人物の性格描写はあざやかで的確であり、文章も流麗であった。》
なんだ、私の感想はすべて言われている。冒頭一行から。
《 ほんとうに重大なことがらと、外見だけのものとを正確に判別することは、われわれ凡人にとっては至難のわざというべきであろう。》
イギリスに住む殺されたアメリカ人大富豪の書斎の描写。
《 一面に本が並んでいる壁のわずかな空所に春信の版画が数枚かけてあった──トレントは、あとでそれをゆっくり鑑賞しようと心の中で思った。書物のほうは、古本市場から十ぱ一からげに買い入れたものらしく、いかにもよそよそしく並べてあり、一度も手にとって読まれたことはないようだった。装幀のぜいたくな豪華版ばかりだが、それらの本がずらりと棚に並んださまは、偉大なイギリスの作家やエッセイストや歴史家や詩人が、枕を並べて討死しているように見えた。》60頁
《 まったく恐ろしい時代になったものだね。社会の物質的な要素と精神的な要素との不均衡が現代ほど大きくなり、それが社会組織の基礎を根底からゆすぶっている時代は、歴史上に、いまだかつてなかっただろう。》121頁
今のことを言っているようだ。事件は暑い六月に起きた。イギリスの六月は日本と同じように暑いのか。どうなんだろう。行ったことがないからわからない。
諏訪市の諏訪敦展へ行った人のブログ。
《 それより、受付の女性があまりにも美人なのにびっくり。眼福眼福(って、じいさんだな)。》
いざ、諏訪市まで行くか! と意気込んだけど、続く一行。
《 受付は何人かで交代するので、運がよければ会えるでしょう。》