ゆらぎの生動感(閑人亭日録)

 味戸ケイコさんの絵、北一明の茶盌から「(ぐっと迫ってくる)訴求力がある」「(ぐっと惹き込まれる)奥の深い印象」としか表現できない感動を覚える。訴求力、奥の深い印象とは何とも曖昧だ。他に良い表現がないかと、無い知恵を絞って呻吟はしないが、午後布団にもぐりぐっすり沈思黙考・・・短い眠りから目覚めてハタと浮かんだ言葉が「ゆらぎのダイナミズム」。ダイナミズムを辞書で調べると、私の思う意味とはちょっと、いや結構違う。で、却下。ここは日本語で「ゆらぎの生動感」に仮留め。以前浮かんでいた用語は「隔たりの君臨」。カッコいいなあと自賛していたが、堅い印象が気になった。美にはそういう側面があるだろうが、それだけではない。もっと生々しいモノだ。瑞々しいといってもいい。20日の日録で紹介した塚本邦雄の短歌と加藤郁乎の俳句。

《 五月祭の汗の青年 病むわれは火のごとき孤獨もちてへだたる 》

《  冬の波冬の波止場に来て返す  》

 塚本邦雄は、「隔たりの君臨」、加藤郁乎は「ゆらぎの生動感」といえよう。二人の著作はずいぶん読んだが、ファンレターを投函してお目にかかり、長くお付き合いしたのは加藤郁乎だった。