「茶の本」

 晴天なれど強い西風。強風吹きつける大通りを避け細道をくねくねと辿ってブックオフ沼津リコー通り店へ自転車で行く。いたるところ花吹雪。ヘンリー・ペトロスキー『フォークの歯はなぜ四本になったか  実用品の進化論』平凡社ライブラリー2010年初版、乾くるみ『蒼林堂古書店へようこそ』徳間文庫2012年8刷、中井英夫『幻想博物館』講談社文庫2009年初版、矢崎存美『食堂つばめ』ハルキ文庫2013年2刷、山田正紀『風水火那子(かなこ)の冒険』光文社文庫、計537円。105円の値札はそのまま通用。

 岡倉覚三(天心)『茶の本 The Book of Tea 』(1906年刊)岩波文庫1968年47刷を読んだ。何度目の再読だろう。間然するところがない名文、達意の名訳(村岡博)。初読のような新鮮な感銘(忘れっぽくなっただけか)。今回の読書のきっかけは、一日に記したハイデガーのことから。

《 個人を考えるために全体を考えることを忘れてはならない。このことを老子は「虚」という得意の隠喩で説明している。物の真に肝要なところはただ虚にのみ存すると彼は主張した。(引用者:略)虚はすべてのものを含有するから万能である。虚においてのみ運動が可能になる。おのれを虚にして他を自由に入らすことのできる人は、すべての立場を自由に行動することができるようになるであろう。全体は常に部分を支配することができるのである。 》 「道教と禅道」

《 芸術においても同一原理の重要なことが暗示の価値によってわかる。何物かを表さずにおくところに、見る者はその完成する機会を与えられる。かようにして大傑作は人の心を強くひきつけてついには人が実際にその作品の一部分となるように思われる。虚は美的感情の極致までも入って満たせとばかりに人を待っている。 》 「道教と禅道」

《 禅門の徒は事物の内面的精神と直接交通しようと志し、その外面的の付属物はただ真理に到達する阻害とみなした。この絶対を愛する精神こそは禅門の徒をして古典仏教派の精巧な彩色画よりも墨絵の略画を選ばしめるに至ったのである。 》 「道教と禅道」

《 道教は審美的理想の基礎を与え禅はこれを実際的なものとした。 》 「道教と禅道」

《 芸術が充分に味わわれるためにはその時代の生活に合っていなければならぬ。それは後世の要求を無視せよというのではなくて、現在をなおいっそう楽しむことを努むべきだというのである。また過去の創作物を無視せよというのではなくて、それをわれらの自覚の中に同化せよというのである。伝統や型式に服従することは、建築に個性の表れるのを妨げるものである。 》 「茶室」

《 真の美はただ「不完全」を心の中に完成する人によってのみ見いだせる。人生と芸術の力強いところはその発達の可能性に存した。 》 「茶室」

 塚本邦雄毎日新聞に連載した「けさひらく言葉」で「第五章 芸術鑑賞」から一文を紹介している。

《 冬の曲となれば、雪空に白鳥の群れ渦巻き、霰(みぞれ)はぱらぱらと嬉々として枝を打つ。 》

 鑑賞から。

《 人々の心の琴線は、真の芸術に巡りあった時、初めて共鳴し、やがて妙音を生む。この書、覚三岡倉天心が英文で出版した。 》

 ネットの見聞。

《 「心」というのは概念というよりは装置だったようです。すでに存在する儀礼や仕草の下に「心」をつけると「そのような儀礼や仕草を駆動し、基礎づけている心情」が濾過されて抽象化される。「玄室に座して沈思している人の姿」に「心」をつけると「悪」になるとか。 》 内田樹

《 「心」というのは「外見的に・・・をしているときの心情や内面のありさま」を概念化する装置なのです。だから、そこらへんにあるものに「心」をつけるといくらでも新しい感情や思念が生まれる。すごい発明ですね。これは漢字文化圏の話ですけれど、インドやパレスチナでも同じことがあったのでは・・・ 》 内田樹

《 「記号化された世界」と「非分節的世界」の間を架橋する「心」を発明したおかげで人間たちの世界はずいぶん広々と住みやすいものになりました。でも、「心の向こう側」は相変わらず残っていて、ときどき「こっち」に侵入してきます。それに名前をつけるのが「文学」や「哲学」の仕事ではないか、と。 》 内田樹

《 『しあわせの書』豊島区中央図書館に中国語版の所蔵あります。泡坂妻夫のご家族から寄贈されたものです。今、台湾にいる島崎博氏が出版されているようです。私には読めませんが、作りは日本語版と変わりません。 》 泡坂妻夫bot@BotKururi44

 どんな字組みか見てみたい。

《 ある民放関係者は「安倍首相と直接会った社長から、番組改編後の出演者を誰にするかの指示が下りてくる。何が話されたかは知らされない。ただでさえ出演者に降板を告げるのは大変なのに、制作現場は説明に困っています」と声を潜める。 》
 http://mainichi.jp/shimen/news/20140402dde012040005000c.html

《 東電、汚染水漏れ調査打ち切り 原因不明のまま 》
 http://www.47news.jp/CN/201403/CN2014032601001954.html

《 政府が策定中のエネルギー基本計画の序文から、2月に決定した原案に記載していた東京電力福島第1原発事故への「深い反省」を削除していたことが4日、分かった。 》
 http://www.47news.jp/CN/201404/CN2014040401001513.html

《 早く来たのはアベノミクスより消費税8% 》