『第13巻 言語空間の探検』(閑人亭日録)

 共同通信などが報道。
《 冷泉家秘伝の箱130年ぶり開封 藤原定家古今集注釈書発見 》
 https://news.yahoo.co.jp/articles/417aecf9592ff7a3e9c7d06e9305c5c40a3311ce
 昨日取りあげた『全集・現代文学の発見 第13巻 言語空間の探検』収録、安西均「新古今斷想 藤原定家」を想起。

《 「それが俺と何の関わりがあらう? 紅(クレナヰ)の戦旗が」
  貴族の青年は橘を噛み蒼白たる歌帖(カイエ)を展げた
  烏帽子の形をした剥製の魂が耳もとで囁いた
  燈油は最後の滴りまで煮えてゐた
  直衣の肩は小さな崖のごとく霜を滑らせた
  王朝の夜天の隅で秤は徐にかしいでゐた
  「否(ノン)! 俺の目には花も紅葉も見えぬ」
  彼は夜風がめくり去らうとする灰色の美學を掌でおさへてゐた

  流行行雲花鳥風月がネガティヴな軋みをたてた
  石胎の闇が机のうへで凍りついた
  寒暁は熱い灰のにほひが流れてゐた
  革命はきさらぎにも水無月にも起らうとしてゐた。 》

 革命は今・・・起らうとしてゐない。が、しかし、視点を変えてみれば。「美術の発見」「美術の発掘」。そこから現(露)われてくる何か。知覚の転換、地殻の変動。歴史観、正統性を揺るがす作品。縄文~KAOSU。