ゲオルク・ジンメル「ジンメル・コレクション」ちくま学芸文庫1999年収録「ヴェネツィア」1907年は、「人々が昔から感じ続けてきたヴェネツィアの『夢のような』性格」に深い洞察を入れた優れたエッセイで、思わず惹き込まれ、訪れたこともないヴェニス=ヴェネツィアが、急な満ち潮のように迫ってきた。今朝の新聞、 岩波書店の広告にはピエロ・べヴィラックワ「ヴェネツィアと水 ―― 環境と人間の歴史 ――」。それは措いて。
ヴェニス=ヴェネツィアを意識したのは多分十代、大好きなフランソワーズ・アルヌールを観たくてテレビにかじりついて観たロジェ・ヴァディム監督の映画「大運河」1957年だった気がする。成人してそのサウンドトラック盤、モダン・ジャズ・カルテット「たそがれのヴェニス」を購入した。ジャケットにはターナーの「 View of The Grand Canal 」の絵。手元にはそのLPレコードと映画の録画ビデオがある。映画は、ターナーの明るい大運河風景とは違って、寒々とした景色だった記憶。
ハドリー・チェイス「ヴェニスを見て死ね( Venetian Mission )」ハヤカワポケットミステリ1974年はさておき、アンリ・ド・レニエ「水都幻談」平凡社ライブラリー1994年を読む。この1906年の詩集は、青柳瑞穂の手により凝古体の流麗な訳文に移されている。
君、来たり給へ、われなほこの地にあり。このページ認めゐる折から、黄昏は
大運河を暗くつつみ、遠近の鐘々、十一月の灰色の空に響きわたりぬ。
ブックオフ長泉店で一冊。シャーロット・アームストロング「毒薬の小壜」ハヤカワ・ミステリ文庫1977年初版、105円。