月末なんだ

 昨晩思い立ち、ブックオフ函南店まで自転車を走らせる。この夏とうとう行かずじまいだった。夜の走行は気持ち良い。東直己『ライト・グッドバイ』早川書房2005年初版帯付、田中啓文『落下する緑』創元推理文庫2008年初版、松村昌家『水晶宮物語』ちくま学芸文庫、計315円。

 月末だ。昨日までまったく頭になかった。九月はまだまだ続くと思っていた、ホント。雨だけど徒歩。

 エーリヒ・ケストナー『一杯のコーヒーから』創元推理文庫1984年14刷を読んだ。解説に軽文学と冠せられていた。軽音楽と同じような使われ方だろう。

≪芸術的なザルツブルグの古都を背景にして描かれたゲオルグとコンスタンツェの恋愛は、心憎いほど軽妙で、優美で、ユーモラスである。そして実にしゃれている。≫小松太郎「訳者あとがき」

 そのとおり。『一杯のコーヒーから』という単行本をブックオフで見かけて、なんか気になる題名だなあと自宅の本棚を眺めてこれに出合った。秋風が立つと温かいコーヒーが欲しくなる。夏の間冷蔵庫で眠っていたインスタント・コーヒーを淹れて読了。プールでの場面。

≪「助けてえ!」コンスタンツェはびっくりして気を失ったような格好をした。それからおもむろに水の中にからだを沈ませて、わたしに岸へ引っぱって行かせた。
 しかし、とにかく人工呼吸で息を吹き返した。≫

 まったく、女って。かわいい。ま、彼女は伯爵家のご令嬢。

≪彼女は九月二日に帰って来なければならない。それから家じゅうで、例年どおりミラノへ葡萄療法に出かけることになっていたからである。≫

 ミラノ。この前読んだ須賀敦子『コルシア書店の仲間たち』文春文庫の舞台がミラノだった。

≪招いてくれる人たちは、たいてい市街の中心、現在は埋め立てられてしまった、大聖堂をかこむ運河と、旧城砦のあいだの区域に住んでいて、いろいろな意味での特権階級に属する人種だった。≫

≪やがて、せまいミラノの上流社会では、みな、若いころからの友人知人だとわかって、なんだと思ったのだけれど。≫