歌人の福島泰樹はその歌集「望郷」思潮社1984年の栞に書いている。
「寺山さんが未練ある歌の別れをしてから十三年の歳月が流れようとしている。もちろん、この間、どこにも歌は発表されていない。」
しかし、寺山修司は作歌していた(昨日の日録)。感慨深いものがある。「望郷」は寺山修司追悼歌集。それから三首。
故郷はと問われるならば吹雪する歳晩十日機罐車の中
祖国それは身捨つるほどに霧深き梅、茫漠の雲赴くところ
あおぞらにトレンチコート羽撃けよ寺山修司さびしきかもめ
望郷という言葉からまず思い浮かべるのが映画「望郷」ではなく森進一歌う「望郷」。この歌の導入部でも機罐車の音が使われていた。新幹線じゃ望郷どころか郷愁も旅愁もないな。トレンチコートが似合う男になりたかったなあ。