声に出せない日本語

 啓蟄というにはちと寒い。昨晩の雨は周囲では雪。富士山箱根愛鷹山雪景色。ああ今冬は雪に触れずに終わるのか。つまらんなあ。

 つまらんなあと言われれば万事休す、が官能小説だ。永田守弘編「官能小説用語表現辞典」ちくま文庫 2006年にはオノマトペも収録されている。

  ぎゅいんぎゅいん
  クニクニ
  しゅにしゅに
  じゅるん
  ぬっちゃ ……ETC.
 やたらに長いオノマトペがずいぶんあって、まず写し間違えるので敬遠。しかし、「メリメリッ……」とは。妄想癖のある私でもちょっと難しい。例文でははあ、と半分納得。奥が深いわ。

 解説で重松清が書いている。
「これらは皆、『声に出して読めない日本語』である。だが言葉の真の豊かさとは、じつは口に出すのがはばかられる世界の描き方にこそひそんでいるのではないのだろうか。」
「この労作は『日本人の性の豊饒さ』の証として読み継がれるべき書物だと思うのだ。」
「すごいんですよ、ほんとに、この世界は。」
 たしかに。同感。

 ブックオフ長泉店で二冊。吉田稔美(としみ)「つづきのねこ」講談社2004年初版帯付、「このミステリーがすごい!2008年版」宝島社2007年初版、計210円。