年始休館

 暮れから読んでいた木田元ハイデガーの思想」岩波新書1993年を昨夜遅く読了。知的探求に思わず奮い立った著作だ。高校生の時、三木清「哲学入門」岩波新書を読んで、現実が足元から揺らぐとき、そこから哲学が始まるといった文章にこれだ、と奮い立ったけれども、途中で挫折。大学時代、岩波講座「哲学」の何巻目だったか「存在と知識」とかの巻を開き、存在論の項目を熟読したけれども、違和感がぬぐえず挫折。そしてこのたびの木田元ハイデガーの思想」に到達。やっと腑に落ちた気分だ。私が希求し探求してきた存在論がここにある。木田元の文章は簡明、しかし、じつに深い。見事だ。一度読んでわかった気分になるけれど、いざ自分の言葉で反芻すると、理解がいかに浅かったかを思い知ることになる。よって引用は「ファシズムかボルシェヴィズムか」という項目196頁から。

「理念の領域と現実政治の領域はまったく異なる。現実政治に関与しようとするなら、政治が単に理念だけで動くものではなく、固有の力学をもっていることをわきまえておかねばなるまい。自分の加担した政治的立場の生む不測の結果にまで責任を負わねばならないものであろう。こんなことになるとは思わなかった、ではすまないのである。」

 それにしてもブックオフ三島徳倉店、長泉店には買いたい本が何もない。いやはや。美術館のお掃除を少し。