『100杯目の水割り』(閑人亭日録)

 東君平『100杯目の水割り』講談社文庫 昭和54年7月15日第1刷発行を本棚から取り出す。帯には「ユー・モア/ユー・モア/もっと笑いを!」「笑い・ペーソス・風刺/ユーモアの世界」とある。
 東君平の詩、文章には軽い可笑しみ・ユーモアそしてその背景の哀しみがふっと感じられる。読後には哀しみ、暖かみ、諦観それらが入り混じった彼の人生観が心に残る。昔読んで付箋を貼ってある箇所。

《 希望とホラとは違うし、夢とホラとも違う。そして叶わなかった希望とか夢は叶わぬ希望とか叶わぬ夢として美しい。
  しかしそこに努力が伴わなかったらホラになる。 》「Mさんち」76頁

《 今頃になれば笑い話のように他人に話せるけれど本当はそんなことでは済まされななかったというものがあった。 》「パン屋さんち」82頁

《  僕がこういった事を話すと人は、
  「苦労しましたね」
   と判で押したように簡単に云う。
   僕は苦労とは思ってない。惨めだったとしか思っていない。 》「パン屋さんち」85頁

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