埋草原稿

 昨日の柿本人真似の続き。これは「吟遊星」という同人雑誌に掲載されたものだけど、御沓氏の編集後記には「原稿が一ページ分足りないので、帰りの電車の中で苦吟する。埋め草原稿を書くたびに、植草甚一を思い出す。」その一ページ分から。

  世の中はなにか常なるあすか川きのふの質ぞけふは流るゝ

  色里は今ぞさびしさまさりける吉原あたりみなトルコにて

  なけなしのつれなき銭の別れより蝦蟇口ばかり憂きものはなし

 編集後記には江戸狂歌の作者たちの名前。

狂歌人の面々は、歌よりもむしろ名前が奮っているように思われる。畠野畦道(はたけのあぜみち)、地口有武(じぐちのありたけ)、普栗釣方(ふぐりのつりかた)、子々孫彦(このこのまごひこ)、読人志礼多、大屁股臭(おほべのまたぐさ)、小造千万里(こづくりのちんまり)、垢染衣絞、無銭法師、望月まん丸、もとの木網、何陀伽紫蘭、等々等々。」

 あは、こんな引用で埋めてしまった。野間宏「青年の環 第五巻 炎の場所」河出書房新社1971年に着手。これが最終巻。 675頁という暑さ、じゃない厚さ。熱いぜ。陽気も暑い。