真贋の構図

 昨晩、久しぶりにブックオフ三島徳倉店へ自転車で行く。おお、半額セール中。10冊も買ってしまった。単行本は皆川博子を二冊。「薔薇忌」実業之日本社1990年初版「骨笛」集英社1993年初版帯付。大平健「顔をなくした女」岩波現代文庫2005 年初版、立原道造「夢みたものは……」サンリオギフト文庫1990年初版、もりたなるお「真贋の構図」文春文庫1989年初版、結城昌治「裏切りの明日」光文社文庫2008年初版、アルフォンス・アレー「悪戯の愉しみ」福武文庫1990年3刷、マーサ・グライムズ「『跳ね鹿』亭のひそかな誘惑」文春文庫1989年初版、ジョ・R・ランズデール「ロスト・エコー」ハヤカワ文庫2008 年初版、新潮社ストーリーテラー編集部編「 Story Seller 」新潮文庫2009年初版、計520円。一冊52円だとつい多く買ってしまう。

 もりたなるお「真贋の構図」文春文庫表題作を裏表紙の紹介文に惹かれて読んだ。

「長い間所在が不明であった幻の名画が発見されたが、源頼朝の蛭ケ小島配流を題材にしたその絵の中には当時あるはずもない西洋タンポポが描かれていた。これは画家の単なるミスなのか、それとも何か特別な意味があったのか。美術コレクターの世界を描いた表題作」

 うーん、巧みな作だ。戦後史の空間、そして絵の舞台が地元とあっては、あそこかここか、と想像を巡らせてしまう。

「美術ジャーナリズムが、行政や市場に、いちじるしい影響を受けることも、知るようになっていた。もっとも……文化庁や画商や蒐集家の存在が、美術ジャーナルの発生基盤であるともいえた。」

「君も知っている筈だが、美術の世界は、美しいものを提出するところにしては、想像以上にうす汚れている。われわれ美術ジャーナリストに対しても、お尻がムズ痒くなるような、阿諛追従が多い。」

 以上は「真贋の構図」からだが、他の四つの短篇もそれぞれに業界(書道、釣り、漫画)に精通している描写があり、「 開運!なんでも鑑定団」のような薀蓄話もあり、大人の読み物という印象。

 ユネスコ世界遺産は自然遺産、文化遺産だけだと思っていたら、「世界の貴重な資料の保存と認知度向上を目的とした『 世界記憶遺産』」もあった。日本からはひとつも登録されていないとは。おいおい。