肉体への憎しみ

 「虫明亜呂無の本・1 肉体への憎しみ」筑摩書房1991年初版、井上ひさしとの対談から虫明の発言。

「だからスポーツは一種の精神主義に対するアンチテーゼを提出すると同時に、肉体万能論に対して水をぶっかけることが必要だと思う。それから、今の話で僕はすぐ思い出すんですが、たとえば『健全な精神は健全な肉体に宿る』という有名な言葉のことなんです。実はこれは有名な誤訳であって、『健全な肉体と健全な精神があれば、あとは富も名誉も地位も今更なにが必要だろうか』というのが本来の言葉なんです。」

「それともうひとつは『体力』という言葉も英語でいうとフィジカル・フィットネス、つまり適応力なんですね。それを日本人は、すぐにパワーだと誤解するんですね。」

「つまり精神と肉体というものを、どういうふうにして自分の環境に適応させるかということが、体力なのであって、そこを誤解している。その誤解の上に、日本の誤った精神主義も肉体万能論も勝手に花開いている。」

「極端に言うと、一般常人はスポーツをしなくていいんですよ。」

 目から鱗の発言だ。スポーツすることに興味がなく、左足の調子が良くない私にはなんとも嬉しい発言ばかり。表題エッセイ「肉体への憎しみ」で、ずっと不明だった、いい女がなんで野球をはじめとするスポーツ選手と結婚するのか、その訳がやっとわかった。そういうことか。

 ブックオフ長泉店で二冊。藤野恵美「ハルさん」東京創元社2007年初版帯付、本田誠ニ「セルバンテスの芸術」水声社 2005年初版帯付、計210円。後者は題名に惹かれて買った定価五千円。はてさて、いつ読むのだろうか。読みたい本は峨峨たる山嶺を成している。壮観壮観。いやあ、見事なものだ。は、は、は、はぁ。