きわめて原始的なやり方

 はやぶさのカプセルをひっくり返してコンコンと叩くと微粒子がゾロゾロというニュースには笑った。それまではカプセルを上に向けてさじで掻きだしていた。ひっくり返して出すことを考えなかったとは。

≪担当者が最後に念のため容器をひっくり返し、工具でたたいてみた。すると、予想を超える数の微粒子が出てきたという。 ≫

≪「きわめて原始的」(宇宙機構)なやり方が意外にもうまくいった。≫

 毎日新聞昨夕刊、田中和生文芸時評」。

≪共通了解としてのリアリズムが失われ、どんな書き方でも可能になった現在の小説で、その書き方からすぐれた作品を識別するのは困難になりつつある。自由な場所での非リアリズム的な書き方は、それが工夫の結果なのか単に文章が雑なのかわからないからだ。だとすればどの書き手も見てもらいたがる書き方より、物語としてのかたちに注目する方が作品の現代性を取りだしやすいかもしれない。≫

 書き方を描き方に、小説を絵画に、文章を筆触に、書き手を描き手に替えると、そのまま美術にもいえる。

≪共通了解としてのリアリズムが失われ、どんな描き方でも可能になった現在の絵画で、その描き方からすぐれた作品を識別するのは困難になりつつある。自由な場所での非リアリズム的な描き方は、それが工夫の結果なのか単に筆触が雑なのかわからないからだ。だとすればどの描き手も見てもらいたがる描き方より、物語としてのかたちに注目する方が作品の現代性を取りだしやすいかもしれない。≫