虚栄の肖像

 昨夕帰りがけにブックオフ長泉店で三冊。北森鴻『深遠のガランス』文藝春秋2006年初版帯付、法月綸太郎『しらみつぶしの時計』祥伝社2008年初版帯付、西沢正史・編『古典文学鑑賞辞典』東京堂出版1999年初版、計315円。『深遠のガランス』は知人画家への贈呈用。

 北森鴻『虚栄の肖像』文春文庫2010年初版を読んだ。『深遠のガランス』の続編。「虚栄の肖像」「葡萄と乳房」「秘画師遺聞」の三篇から成る。前作よりも一層凄みを増している。先が見えない大胆な展開とその見事な結末=アクロバット的な転回着地に舌を巻く。「秘画師遺聞」、修復を依頼された秘画に関して語られる緊縛絵の薀蓄には圧倒された。よく調査したものだ。

《 そもそもあぶな絵と春画とは違う。性行為そのものを時に滑稽に、時に劣情をそそるように描く春画と違い、あぶな絵にはそこはかとない色情がある。》202頁

 「葡萄と乳房」と「秘画師遺聞」は蝶番のように繋がっている。「秘画師遺聞」には惚れた。結びのニ行が泣かせる。恋情とはなんと切ないものか。

 きょうのうなずき。

《 科学なき哲学は不毛であるが、哲学なき科学は盲目である 》