休館日/ 木彫の椅子展

 ポール・ヴァレリー『テスト氏』でオツムがてんてこ舞いだったので、煮詰まりをほぐすために、昨夕ブックオフ長泉店で105円で購入した、杉本綾責任編集『エロティックス』新潮文庫2009年初版を飛ばし読み。「四畳半襖の下張」から団鬼六まで多彩な中に杉本綾の「フリーダム」が紛れ込んでいるのはご愛嬌。で、渉猟した結果は期待外れ。彼女の好みと私の求めるものとが接近遭遇もしなかった。まあ面白かったのは、杉本と団の対談「官能小説家という人生」。

《 団  僕は着物着た女性が好きですからね、あるスポーツ紙に大正時代の芸者を主人公に書いていたんです。湯文字とか蹴出し(けだし)とか伊達巻とか、帯をとく音、衣擦れの音なんかに情緒を感じて、そういうことを書きたいんですよ。で、「人力車から降りるとき、一陣の風が吹いて芸者の裾がめくれ、鴇色(ときいろ)の蹴出しがのぞいた」なんて書いたら、これがもう通じない。もっと判りやすく書いてくださいよ、と言うから任せたら、大正の芸者の話なのに、「ピンクの腰巻」って直しやがった。「帯をとき、伊達巻を落とすと」も通じない。なんでここに玉子焼きが落ちてくるんですか、なんて言われて、「もう止めた!」 》

 なお、団鬼六で私の最も好きな小説は、いまのところ『肉の顔役』。

 ブックオフ長泉店で105円を90円セールなので三冊。北森鴻支那そば館の謎』光文社2003年初版帯付、霞流一『首絶ち六地蔵光文社文庫2005年初版、栗本薫『黄昏の名探偵』徳間文庫2007年初版、計270円。