昨夕の雨でチリが流れたせいか、今朝は清々しい光。水がきらめくような。白砂勝敏「天然石アクセサリー展」の搬入。
昨日買った『目で見る日本名歌の旅』文春文庫、塚本邦雄「水」が読ませる。
《 清く澄む水の心のむなしさにさればとやどる月のかげかな 》
藤原良経(よしつね)の歌を冒頭に挙げて彼は書く。
《 良経の歌はこの流転する「水」の本質を意識的に把握しようとした稀な一首であった。まさしく「しようとした」のであって、決して十分な把握とは言えまい。》
《 良経はそこで止まってはいなかった。否流水を人生の直喩としてともに流されることを潔しとしなかった。水底に立入って虚無を視たのだ。月が映ったとて何になろう。無の上に無を重ねるだけではないか。》
深い洞察と目に鮮やかな格調高い展開に舌を巻く。斎藤茂吉、坪野哲久の歌を引用し、葛原妙子の名歌で止める。
《 他界より眺めてあらばしづかなる的となるべきゆうぐれの水 》
結び。
《 そして水は永遠に詩歌の最初にして最後の主題であった。》