短歌の待ち伏せ

 開館すぐに来館。車のナンバーは尾張小牧。わ、遠い。

 『現代歌人文庫 葛原妙子歌集』国文社1986年初版を読んだ。全歌収録の『葡萄木立』以外は中井英夫によって3223 首から420首を選出、抄録。好みの歌から少し。

《  蒼ざめし一枚貝のなかにゐる貝婦人月(げつ)婦人ともみゆ

   貝殻のひかりとなりし月の尾根われの死後にも若者は生きよ

   猟銃のごと美しき弟(おと)あらば風吹ける夜のいづこに歩む

   生ける鷹旋回しつつ虚空なる高き朴の香(かをり)に遇ひけむ

   くらがりにわがみづからの片手もて星なる時計を腕より外す

   少年は少年とねむるうす青き水仙の葉のごとくならびて

   あきらかにものをみむとしまづあきらかに目を閉ざしたり

   他界より眺めてあらばしづかなる的となるべきゆふぐれの水  》

 中井英夫の解説「球体の幻視者」から。

《 このとき人はようやく葛原妙子という幻視者の存在を知り、この地上には退屈無残な現実ばかりではなく、美と危機とが断崖の際どい境で互(かた)みに支え合うもう一つの世界があることを教えられたのである。》

 『現代短歌大系 月報7』三一書房1972年、相澤啓三「葛原妙子または恐怖の飛翔」から。

《 おそらく葛原妙子は作品の選ばれ方によって相貌を変える。選ぶひとの秘密をあかしてしまう。》

 歌集『橙黄』からは、『現代歌人文庫』では41首、『現代短歌大系』では49首が抄録されている。重なる短歌は10首ほど。漢字とひらかなの違う歌もある。「中」と「なか」。「われ」と「吾」。

 ネットの見聞。

《  大正新脩大藏經(たいしょうしんしゅうだいぞうきょう、大正一切経刊行会)は、大正13年1924年)から昭和9年(1934年)の10年間をかけて、高麗海印寺本を底本として日本にある漢訳経典をすべて調査校合した、民間人の手による大蔵経である(通常は、国家事業である)。》

《 17字詰29行3段組、各巻平均1,000ページになっている。正蔵(中国所伝)55巻、続蔵(日本撰述)30巻、別巻15 巻(図像部12巻、昭和法宝総目録3巻)の全100巻から成り、漢訳の仏典の最高峰と呼ばれている。》

《 日本人の母音の長さに関する敏感さヤバイ。もうaとaaの違いが分かるってレベルじゃない。もうこの時点で英語話者はお手上げ。でも日本語はそんなのお構いなし。永遠とかeeenだし鳳凰とかhoooo。極めつけは「東欧を覆う」の tooooooou。こんな言語、世界にない。》

《 カーマスートラには、例えば人を好きになる段階を次のように書いてある。読むと納得してしまう。一、見てほれる。一、心を引きつけられる。一、絶えずものおもいにふける。一、眠れなくなる。一、やせ衰える。享楽の対象から遠ざかる。一、恥も外聞もなくなる。一、気が狂う。一、失神する。一、死ぬ。》