戦後名詩選1

 朝は源兵衛川の月例清掃。地下水位が上がったので、先月まで三島梅花藻に付着していたヌクがきれいに流されて、水中で美しい緑が揺れている。

 『現代詩文庫特集版1 戦後名詩選1』思潮社2000年初版を読んだ。石原吉郎から谷川俊太郎まで27人の選詩集。ひとりだけ知らない詩人、村上昭夫という人。思潮社の現代詩文庫159が『村上昭夫詩集』2000年刊。収録された三篇を読む。透明な寂寥感。「象」という詩の冒頭と結び。

《  象が落日のようにたおれたという
   その便りをくれた人もいなくなった  》

《  前足から永遠に向うようにたおれたという
   巨大な落日の象をもとめて  》

 落日に、落日という言葉にも、子どもの時から惹かれている。落日に魅せられたのは中学一年の冬だった、と書いてもしようがない。それから落日にかかわる言葉が気になった。今ではゴジラの産みの親として知られている香山滋だが、当時未知の作家だった彼の『海鰻荘奇談』桃源社1969年初版を購入させたのは、帯の文章だった。その後半部。

《 華麗奔放な文体と博大な古生物学の知識を駆使して執拗に描く魔境・秘境は、原始回帰を夢見る壮大な落日の理想郷である。 》

 壮大な落日。この表現で購入。一読で魅了された。種村季弘の解説頁に、昭和23年に出た『オラン・ペンテク奇譚』の表紙画像があった。知人の家で実物を手にし、描かれた美女にあらためて惚れたが、そのイラストは山名文夫だと後日知って、やはりねえと納得。それから山名文夫のイラストを欲しくて銀座の資生堂へ行って購入した。宇佐美斉『落日論』筑摩書房1989年も、そんな関心から読んだけれど、印象が薄かった。今読めば違うかもしれない。

 当時愛聴していた二つの「夕陽」の歌が今では You Tube で苦労なく視聴できるんだから、時代は変わった。一つは『夕陽が沈む/フォア・ダイムズ』、もう一つは『夕陽が泣いている/ザ・スパイダース』。あの頃の歌が目白押しだわ。参ったな。『君に逢いたい/ジャガーズ』を聴いては雑木林をあてもなく歩いた。そして『夕闇のふたり/西嶋三重子』。センチメンタル・ジャーニー。思えば遠く来たものだ。

   大空の斬首ののちの静もりか没(お)ちし日輪がのこすむらさき  春日井建

 ブックオフ沼津リコー通り店で文庫本を七冊。有吉佐和子『青い壺』文春文庫2011年初版、柄谷行人日本近代文学の起源講談社文芸文庫1990年9刷、中野京子『怖い絵 泣く女篇』角川文庫2012年4刷、日夏耿之介『風雪の中の対話』中公文庫1992年初版、講談社文芸文庫・編『戦後短篇小説再発見8 歴史の証言』講談社文芸文庫2002年初版、『カフカ短篇集』岩波文庫2003年38刷、ジャック・デリダ『声と現象』ちくま学芸文庫2005年初版、計735円。『青い壺』は解説が平松洋子なので。場違いな本が挟まっている時代小説文庫棚にはやっぱり、佐高信『時代を読む』などなど。愉しいねえ。

 ネットの拾いもの。

《 ハルキノミクス !? 》

《 「村上春樹作品はどうしてこんなに話題になるんでしょうか」という質問をしたがるわけだが、「そりゃ、あなたたちマスコミが大騒ぎするからでしょうよ」以外答えようがない。 》

《 【震度6弱】 冗談で作った「地震速報に連動してハードディスクのデータを消すソフト」がきっちり作動!「大事なフォルダ」が全消去される! 誰か俺のエロフォルダ知りませんか!ここに!ここに確かに俺のエロフォルダがあったんです! 》