木乃伊の口紅

 伊豆高原の牧村慶子展のお手伝いへ行く。

 「 田村俊子、旧満州の新聞にエッセー 戦時下 日中友好説く」という東京新聞の記事を読んで、『あきらめ・木乃伊の口紅』岩波文庫1986年3刷収録の代表作「木乃伊の口紅」を読んだ。木乃伊はミイラと読む。四十年余り前、文学全集に収録されていた「木乃伊の口紅」という題に怪奇小説的な興味を覚えたが、今日まで読む機会がなかった。今読んで正解。怪奇小説ではなくて情痴小説だった。小説家を志す貧しい夫婦の話。

《 不仕合せに藝術の世界に生れ合せてきた天分のない一人の男と女が、それにも見捨てられて、さうして窮迫した生活の底に疲れた心と心を背中合せに凭れあつてゐる様な自分たちを思ふと泣かずにはゐられなかつた。 》

《 男の生活を愛する事を知らない女と、女の藝術を愛する事を知らない男と、其れは到底一所のものではなかつた。 》

 妻は、亭主に強いられて応募した懸賞小説が当たって、小説家への道が拓ける。作家を諦めた夫は、いじける……。どこかで読んだ……といっても、田村俊子1884年-1945年)がこれを発表されたのは1914年。ほぼ百年前。まだランプの生活。実生活を基にした小説のようだ。

《 女性の職業作家の草分けで、妻ある男性を追ってカナダへ渡るなど奔放に生きたことでも知られた。 》 東京新聞

 ネットの拾いもの。NHK連続テレビ小説あまちゃん」主役能年玲奈

《 「『お父さんが大好き』と公言し、色気はゼロ。99パーセント処女ですよ」

  残り1パーセントはお父さんか。 》