お疲れ勉強

 昨日ふれた月刊『現代』1991年2、3月号の「徹底討議 近代日本の100冊を選ぶ」は、伊東光晴大岡信丸谷才一森毅そして山崎正和の五人が、《 この120年間のあらゆるジャンルの本を俎上にのせ「いま読んでおもしろい」ものを厳選した初の試み 》。

 ネット検索したら五年前の拙文が出てきた。

《 百二十年間でたった百冊を選ぶのだから、石川啄木芥川龍之介川端康成小林秀雄三島由紀夫が落選。キビシ〜イ。単行本は講談社から1994年に出ているので、詳しくはそちらを。

  まだ読んでないの〜? と突っ込まれる選出本は、江戸川乱歩「パノラマ島奇談」、谷崎潤一郎痴人の愛」、手塚治虫鉄腕アトム」、村上春樹羊をめぐる冒険」などなど。

  まだ読んでない本は、岡本綺堂「半七捕物帳」、吉川英治鳴門秘帖」、九鬼周造「『いき』の研究」、武田泰淳司馬遷の世界」、大岡昇平「野火」、大江健三郎「芽むしり仔撃ち」、開高健「日本三文オペラ」、井伏鱒二「珍品堂主人」、吉行淳之介砂の上の植物群」、石牟礼道子苦海浄土」などなど。以上の本は本棚にはある。

  まず読まない本は、大槻文彦言海」、小林一三「日本歌劇概論」、山田盛太郎「日本資本主義分析」、牧野富太郎「牧野日本植物図鑑」、経済安定本部「経済実相報告書」、篠原三代平・編「産業構造」などなど。手にしたこともない本ばかりだ。

  もう読んでいる!本は、樋口一葉たけくらべ」、夏目漱石「それから」、泉鏡花「歌行燈」、斎藤茂吉「赤光」、永井荷風「腕くらべ」、萩原朔太郎「月に吠える」、小川未明「赤い蝋燭と人魚」、きだみのる「氣違ひ部落周游紀行 」そして古井由吉「杳子」などなど。……二十冊もない……。読む本がたくさんあって楽しみだなあ〜、ああ。 》

 恥ずかしい文だ。この五年で九鬼周造「『いき』の研究」、大岡昇平「野火」、岡本綺堂「半七捕物帳」は読んだ。

 閑話休題。昨日買った西岡文彦『絶頂美術館 名画に隠されたエロス』新潮文庫2011年初版、絶頂といえば高柳重信の俳句。

《   身をそらす虹の
    絶巓
         処刑台   》

 あとがき「絶頂にいたるまで」から。

《 「お疲れビール」という言葉があるが、私は、一日の仕事に疲れ果てた心身が本当に求めているのは、むしろ「お疲れ勉強」ではないかと思っている。他人に命じられるままコマネズミのように働いて心身共に疲れ果てた一日の終わりに、せめて数十分でも自分の向上のために使える時間というものがなくては、人は生きていけないように思うからであり、自分が労働の奴隷である以上に自身の人生の担い手であることを確認しなくては、人は明日に備える眠りに入っていけないように思えるからである。 》

 深くうなずく。生まれてこのかた晩酌をしたことがない。「お疲れ勉強」が待っているから。

《 ごく簡単にいうならば、テレビとは、ちょっと知りたい人と、もっと知りたい人のためのものである。ちゃんと知りたい人は、自分で本を読むからである。 》

 テレビをインターネットに置き換えてもいい気がする。

 ネットの見聞。

《 「PC遠隔操作事件弁護人の検察、報道への怒り炸裂」 江川 紹子。 》

《 検察側が提出した証明予定記載事実に事件と被告人のつながりについてまったく記載されていないという「異常なもの」(佐藤弁護士)だった。唯一の警察官調書が開示されたものの、肝心の部分は黒塗り。 》

《 さすがに、裁判官も「異例、または異常だが、こうなった事情を説明してもらえますか」と尋ねた、という。 》

 ネットの拾いもの。

《 オクラホマの竜巻のニュースを妻と見ていて「地下シェルターとかあるんやねえ」と妻が感心するので「オクラホマミキサーってダンスあるやろ?あれは竜巻に備えて地下シェルター掘る動作からきた踊りやねん」とホラ吹いたら妻が「そうなん?!」と一瞬信じた。夫への信頼感を久しぶりに感じた瞬間。 》