枠からの解放

 昨日アップした山下和仁展覧会の絵」の続き。

《 前半にやや弾き急ぎ感がないではないが、それも含めまるで嵐のようにデモーニッシュな演奏に圧倒される。これほどの演奏家がなぜ過小評価されてきたのか。ギターを古典楽器の枠から解放したからだろうか。 》 椹木 野衣

 上記の「ギター」「演奏」などを別の言葉に替えると、北一明への評になる。

《 それも含めまるで嵐のようにデモーニッシュな焼成に圧倒される。これほどの陶芸家がなぜ過小評価されてきたのか。陶芸を古典工芸の枠から解放したからだろうか。 》

 常識を揺るがす、突き抜けている、桁違い、並み外れている。……既成の常識を覆す作品を容認できない狭量の関係者たちから、無視あるいは厳しい評語を浴びる作家に陶芸・書の北一明、俳句・詩の加藤郁乎がいるが、山下和仁も加わるのか。いや、それにもう一人、ダンサー蛯名健一が加わった……か。

 関川夏央『現代短歌 そのこころみ』集英社文庫2008年初版では、葛原妙子について記されている。

《 それにしても戦後短歌に大きな足跡を残したこの人の存在が、短歌界の外側に知られることの少ないのは異とするに足る。私も近年まで彼女の名を知らずにいた。歌に接して一驚し、ひたすら不明を恥じた。 》 98頁

 全歌集では、歌人の生前に出た『塚本邦雄歌集』白玉書房1970年、『葛原妙子歌集』三一書房1974年、『寺山修司全歌集』沖積舎1982年を新刊で購入。この三歌集、私には三種の神器みたいなものだ。

 昨日購入した2002年の雪舟展図録、巻頭を飾る宮島新一「雪舟復権」が興味深い。

《 雪舟の名声は二十一世紀になっても維持できるのだろうか。今回の展覧会ではそれが試される。 》

 「はじめに」冒頭がこれだから後述に期待が高まる。

《 どの作品をもって雪舟の代表作とするか、という質問は愚問として一笑されるだろうか。 》

《 もし、毛色の変わった「天橋立図」を代表作と見るならば、雪舟観は大きく様相が変わるだろう。 》

《 「山水長巻」を頂点とした作品によって日本の水墨画を一変させた功績は大きいが、それにもまして、日本の風景を実見にもとづく細やかな筆致で初めて描き出すことによって、日本絵画史上大きな足跡を残すことになった。 》

《 私ならば後者を選ぶ。何よりも中国がそこにないからである。 》

 この視点の導入はおもしろい。例えば日本近代美術について同じことが言えるかもしれない。

《 私ならば後者を選ぶ。何よりも西洋がそこにないからである。 》

 まず浮かんだのが打ち上げ花火。

 午後昼花火に誘われて、沼津市日枝神社のお祭りに友だちと行く。露店のほかに広場で小さなフリー・マーケット。冷やかしていると、知り合いの骨董商に遭遇。彼の知り合いのお店で吾妻ひでお『ひでお絵日記』角川書店2012年初版300円を買う。

 ネットの見聞。

《 東京電力福島第1原発の汚染水問題をめぐり、安倍晋三首相が19日に現地を視察した際、放射性物質による海洋への影響が抑えられていると説明する東電幹部に、「0・3(平方キロ)は(どこか)」と尋ねていたことが20日、分かった。
  首相は東京五輪招致を決めた国際オリンピック委員会(IOC)総会で「汚染水の影響は港湾内0・3平方キロの範囲内で完全にブロックされている」と説明していたが、実際の範囲がどの程度か理解しないまま発言していた可能性がある。 》

 ネットの拾いもの。

《 静止軌道ステーションと打ったつもりが正史綺堂ステーションと変換された。さすがはわたくしのパソコンである。というかなにそのステーション。行ってみたい。 》

 ジジイだけど老婆心から。横溝正史岡本綺堂のこと。