山下和仁/サビーカス/リカルド/ユパンキ

《 山下和仁、演目はクラシックだが、まるでサビーカスを聴いているような情動が音の細部まで神経を張り巡らせている。けっして超絶技術だけではない。 》 椹木 野衣

《 山下和仁のギター。クラシックの演目でもフラメンコのようでもあり、津軽三味線のようでもあり、ヘヴィ・メタルのようでもあり、フリージャズのようでもあり。ジャンルを使い分けるのではない。同じ一曲のなかにすべてが入っている。だから一瞬、自分がいまなにを聴いているのかがよくわからなくなる。 》 椹木 野衣

 上記ツイッターを読んで、手元にある山下和仁(1961年〜)の二作目のLPレコード『山下和仁ギターリサイタル』1979年とCD『鳥の歌/ギター小品集』1991年とサビーカスのLPレコード『フラメンコ・ギターの王者』1975年を聴いた。まずはサビーカス SABICAS 。濱田滋郎の解説から。

《 フラメンコ・ギター史上、空前の技巧に恵まれた創造者であるサビーカス(本名アグスティン・カステリョン、生年には諸説ありますが、一応1912年2月15日を確実らしいものとしておきます)は、スペイン東北部のナバーラ地方にあるパンプローナ市に生まれました。 》

《 では、楽譜を知らぬ天才サビーカスが、並み外れた技巧を駆使して自由自在にえがき出す、美しく新鮮なアンダルシアの音の風俗画をご観賞ください。 》

 音の風俗画とは言い得て妙だ。華麗なる音の風俗画か。

 私はフラメンコ・ギターだったら、ニーニョ・リカルド NINO RICARDO(1904年-1972年)に最も惹かれる。深い陰影を刻むギターの響き。『ニーニョ・リカルド フラメンコ・ギターの至芸』1975年を聴く。濱田滋郎の解説から。

《 ほの暗いひびき、息づかいを持って何事かを語る旋律、言葉には尽くせないひとつの間(ま)をそなえた彼のギターには、たしかに”ドゥエンデ”(魔性)が巣喰ってます。 》

 ぞくぞくっとする演奏。深く同感。

 『山下和仁ギターリサイタル』を聴く。正調というか正統というか、端整で綺麗。美しいというには毒気が足りない。『鳥の歌/ギター小品集』になると、小品なのに深い。凛とした撥音と無音の間に立ち現れる、深い深淵を覗き込むような響き。奥津城からの杳(はる)かな木霊のよう。

 そういえば、日本人ギタリストは、山下和仁のアルバムしか持っていなかった。

《 ユパンキのギターもいいよなあ。 》 椹木 野衣

 アタワルパ・ユパンキ(1908年-1992年)はいい。フォルクローレでは一番じゃないかな。ギターと歌声にアンデスの山々がなぜか浮かぶ。何枚かあるユパンキのLPレコードから『フォルクローレの真髄/ユパンキ名唱集 第2集』を聴く。初期、1930年代後半の録音。

 深々とした滋味を湛える後期の歌唱からすれば朴訥と感じられる歌と演奏。土くれの山を吹き行く乾いた風のよう。それがいい味わいとなっている。 四十年前、ユパンキばかりを流す喫茶店、その名も「ユパンキ」が青森県弘前市にあった。訪問した。それにしても、山下和仁、サビーカス、ニーニョ・リカルド、ユパンキとも You Tube で演奏が簡単に見られるとは。二十世紀には考えられなかった。

 追い風が気持ちよく吹いているので、ブックオフ沼津リコー通り店へ自転車で軽快に行く。図録『雪舟東京国立博物館2002年2刷750円、乾緑郎『完全なる首長竜の日』宝島社文庫2012年初版、井上ひさし・選『児童文学名作全集4』福武文庫1987年初版、中西進『日本人の忘れもの 3』ウェッジ文庫2008年初版、計1065円。帰りは向かい風。疲れた。

 ネットの見聞。

《 辻真先先生トークショー。『仮題・中学殺人事件』などをさっぱり理解できなかった当時の大人向け推理作家たち。ゆえに、もっぱら子供向けに書いた。 》 芦辺拓

 ネットの拾いもの。

《 カード会社は一括払いやリボ払いのほかに出世払いも作るべき。 》