「ボートの三人男」

 風が強いので遠出はせずにブックオフ長泉店へ自転車で行く。『五味康祐代表作集5 麻薬3号 興行師一代』新潮社1981年初版函月報帯付、『時代小説の楽しみ 十一 魔界への招待』新潮社1991年初版帯付、計210円。前者、「麻薬3号」がずっと気になっていた。

 ジェローム・K・ジェローム『ボートの三人男』中公文庫1983年8刷を読んだ。裏表紙から。

《 気鬱にとりつかれた三人の紳士が犬をお伴に、テムズ河をボートで漕ぎだした。歴史を秘めた町や村、城や森をたどりつつ、抱腹絶倒の珍事続出、愉快で滑稽、皮肉で珍妙な河の旅がつづく。イギリス独特の味わいをもつ、代表的な傑作ユーモア小説。 》

 小説は1889年、著者30歳の時の作品。テムズ河に船(ボート)を浮かべて、人や馬が岸からロープで引く。内容は上記のとおり。時代が時代なので、イギリスの歴史に暗い当方には不明な箇所もある。

《 彼は元来、ロマンチックな孤独を楽しむたちの犬ではない。何か騒がしいことがあればそれでいいのである。しかも、それがちょっぴり下らないことであれば、いよいよ嬉しくなってしまう。 》 28頁

 ずっこけ三人組みとこの犬だから、あとは知れたもの。昨日の『密室に向って撃て!』とは趣が違うが、やはり思わず吹き出す笑い。解説で井上ひさしは元版の訳者丸谷才一の解説を紹介している。

《 すぐれた文芸批評家でもある訳者は、実にさり気なくこの小説のおもしろさの秘密を、「この滑稽小説を支えているものは、彼が最初から単なる滑稽小説を狙いはしなかったという点に象徴的にあらわれている」と極めて正確に解き明す。 》

 そして井上ひさしは書く。

《 ユーモアという言葉ほど、わが国で誤解や曲解を蒙っているものはないだろう。(引用者:略)しかし、私見によれば、ユーモアは笑いと洒脱な感情の巧みな結合によって生まれるもので、これはこれでなかなかの力業なのである。そうしてこの結合を文に綴る場合は、たしかな人生観と同じようにたしかな文章技術が要る。 》

 佐々木邦『ガラマサどん』が浮かぶ。

《 くどいようであるが、この小説を速読するのは損だ。読み手は、大河のように悠々と流れて行く訳文にたっぷりと浸たし、身をまかせてほしい。 》

 納得。若い時に読んでも、このおもしろさを理解できず、途中で投げ出していただろう。読書は場所も時も、じつは選ぶ。

 ネットの見聞。

《 特定秘密保護法案が強行採決された衆議院特別委員会をインターネット中継で見ながら、これを書いている。そして、7月に麻生副総理が口にした「ナチスの手口」とはこれだったのだ、との思いを強くした。
  「(ドイツの)ワイマール憲法がいつの間にかナチス憲法に変わった」というのは、麻生副総理の世迷い言だ。当時もっとも民主主義的だったこの憲法は、全権委任法の強引な成立で空文化されたのだ。改憲を回避し、からめ手から憲法を骨抜きにする。これが、「ナチスの手口」であり、安倍政権はここから「学んだ」と思えてならない。 》 池田香代子
http://blog.livedoor.jp/ikedakayoko/archives/51966844.html

《 今日の東京新聞こちら特報部。ノンフィクション作家の保阪正康氏、国会は死んだのかもしれない。現在軍部の圧力はないのにどうして多くの議員が政権にすり寄っていくのか?国民の生命と財産を守るという政治的信念がないからだ。法案賛成議員はこの法律が出来れば別の世界が広がるという想像力がない。 》

 ネットの拾いもの。

 イタリアのファンが制作した実写版「ルパン3世」。いいねえ。
http://vimeo.com/19464495