「蚊取湖殺人事件」

 最近写真に撮るようなトマソン物件や珍景に出合わず、カメラから遠ざかっていた。昨日ブックオフ三島徳倉店へいつもの裏道を行ったのだけれど、巨大な送電線鉄塔(脚が○管で下を車が通過できる)を遠望して、あ〜あ、塗装し直しているところを写真に撮りたかったなあ、と化粧直しされた鉄塔からふと眼を横に巡らすと、すぐそこには火の見櫓。それはいいのだけれど、な、なんと脚の部分がコンリートの電柱の流用。一本の電柱の上に火の見台と半鐘。珍景だ。ケータイは持っているけど、やっぱりフィルムカメラで撮りたい。きょう「写ルンです」を購入。ワクワク。

 泡坂妻夫『蚊取湖殺人事件』光文社文庫2005年2刷を読んだ。この本、ブックオフになかなか出ず、ずっと待っていた。待てば海路の日和りあり、だ。昨日の山本義隆『磁力と重力の発見 1』みすず書房もそう。105円で入手できるとは思ってもいなかった。彼の奥さん山本美智代女史は四十年ほど前からの知り合い。三十年ほど前にはエッセイ集『銀色の影』きゃらばん文庫1984年2刷を恵まれている。収録の「裁く者、裁かれる者=東大闘争と私」1970年は、夫・山本義隆東大全共闘議長の裁判を綴っている。

《 夫は保釈されても、東大闘争が終ったわけではないから、裁判闘争や新たな闘争をつづけてゆくなかで、一物理学者として生きてゆくことは、並たいていではないだろう。 》

 その苦闘の一成果が、『磁力と重力の発見』三巻だ。パピルス賞、毎日出版文化賞大仏次郎賞を受賞した。

 山本美智代女史が味戸ケイコさんの多摩美術大学山岳部の先輩で、味戸さんの1985年の初個展(ギャラリーさんよう)も山本女史がお膳立てしたことを知ったのは、個展からずっと後のことだった。

  『蚊取湖殺人事件』は六短編を収録。最初の「雪の絵画教室」は、『密室レシピ』角川スニーカー文庫2002年に収録されていて、読んでいた。が、すっごく恥ずかしい。自転車のトリックを全く違って記憶していた。きょう読んだ直後は、同じ時期に似たトリックを使ったのでは? と勘ぐってしまった。(私の)記憶は変形される。上記、山本女史から本を恵まれた記憶は果たして正しいのか。日付サイン入りを買ったのかなあ。当時の日記を見ればはっきりするだろうけど。

 それはともかく。軽めの本格ミステリ、職人噺、奇術ネタと、泡坂妻夫の小説世界が手軽に味わえる。

 晴天で風が無いのでブックオフ沼津リコー通り店へ自転車で行く。文庫を五冊、大岡昇平中原中也講談社文芸文庫2007年16刷、蓮見重彦『物語批判序説』中公文庫1990年初版、平島二郎『世界建築の旅』中公文庫1992年初版、宮本常一『庶民の発見』講談社学術文庫1993年5刷、ミステリー文学館・編『幻の名探偵』光文社文庫2013年初版、計525円。

 ネットの見聞。

《 「立場が大きく異なる者同士が互いにわかり合えずにいる」のはそれぞれがおのれの「立場」から踏み出さないからである。「立場」が規定する語り口やロジックに絡め取られているからである。 》

《 「あなたは何が言いたいのですか。わからないので、しばらく私の方は黙って耳を傾けますから、私にわかるように説明してください」と相手に発言の優先権を譲るというのが対話のマナーであるが、このマナーは今の日本社会では認知されていない。 》

《 ボクシングの世界タイトルマッチで、試合の前にチャンピオンベルトを返還して、それをどちらにも属さない中立的なところに保管するのに似ている。真理がいずれにあるのか、それについては対話が終わるまで未決にしておく。いずれに理があるのかを、しばらく宙づりにする。これが対話である。論争とはそこが違う。論争というのはチャンピオンベルトを巻いたもの同士が殴り合って、相手のベルトをはぎ取ろうとすることである。 》 内田樹「コミュニケーション能力とは何か?」より。
 http://blog.tatsuru.com/2013/12/29_1149.php

 人気上昇中の都市 世界トップ10、1位はハバナキューバ。海外旅行で行きたい都市は、私もハバナ
 http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131226-00010002-dime-int

 ネットの拾いもの。

《 このままだと年が越せず、12月32日とかが出現しそうです。申し訳ないです。 》