「真剣師 小池重明」

 団鬼六真剣師 小池重明イーストプレス1995年初版を読んだ。こいけ・じゅうめい 1947年生 - 1992年没。

《 能ありて識なきものは卑しむべし、という言葉があるが、小池はその能ありて識なき人の代表みたいな男であった。 》 4頁

《 真剣師というのは賭け将棋で渡世する、いうなれば将棋のギャンブラー。 》 14頁

《 勝つことが義務づけられているのが真剣師なのである。 》 131頁

《 小池に「新宿の殺し屋」という異名がついたのもこの頃からだった。 》 132頁

 一九七九年十一月「大阪通天閣の死闘」から。

《 小池は中盤以降、猛攻に転じた。穴グマ囲いの強さを計算に入れて、皮を切らせて肉を斬るの反撃に転じたのだ。/ 椅子に座っていた観戦者が総立ちになるほどの壮絶な終盤の死闘が展開する。 》 139頁

《 人に嫌われ人に好かれた人間だった。これほど、主題があって曲がり角だらけの人生を送った人間は珍しい。 》 293頁

《 とにかく、面白い奴だった。そして、凄い奴だった。 》 293頁

 巻を措くあたわず、巻を閉じて一吐息。昨日の『大穴』の相場師を真剣師小池重明の一生というノンフィクションに仕立てたような。人生まさしくジェットコースター。どん底から絶頂へ、絶頂から谷底まで一直線の墜落、そして一気反転頂点へ、また転落。あきれるほどの絶頂悲惨の繰り返しの四十四年。そこに団鬼六は自らの似姿の拡大版を見たのかも。しかし、ちゃんと距離を置いて冷静に実像を(愛惜をもって)描写している。いい本だ。

《 これらの人々は小池の半生に随伴したともいえる古い仲間だが、私が小池重明と知り合ったのは、七、八年ばかり前で小池がアマ棋界より追放されて異常な崩れ方をした頃からのつきき合いということになる。 》 18頁

 小池重明、最期にすごい作家に出会えて運のいい人だ。

 ブックオフ長泉店で文庫本四冊。泡坂妻夫『泡亭の一夜』新潮文庫2002年初版帯付、大竹省ニ『遙かなる鏡  写真で綴る敗戦日本秘話』中公文庫2000年初版、マーシャ・ガッセン『完全なる証明』文春文庫2012年初版、サキ『ザ・ベスト・オブ・サキ』サンリオSF文庫1984年5刷、計420円。『泡亭の一夜』は所持しているのが栞紐無しなので。帯もついていてラッキー。

 ネットの見聞。

《 古典は読んだときは面白くなくても、結局はあとでいろいろ「助かる」ことは、長さだけは生きてきて学んだことだ。 》 カフェ「白梅軒」

 ネットの拾いもの。

《 リポビタンDって、てっきりビタミンDが入っているのかと思っていたら含まれていなく、デリシャスの略だとか 。 》