「終末への予感」つづき

 大震災から三年。新聞には「喉元過ぎれば」の記事。沼津市でも下田市でも津波の恐れから高台移転が熱く語られたけれど、たった三年で移転への熱気は薄れ、今の場所でいいや、に。一気に盛り上がってすぐに冷める。変わらない心性。それはボランティア活動にもいえる。実現するためには熱気よりも静かな情熱を保ち、静かにゆっくりとことを遂行する……。つねに変化する状況に機敏に対応すること。小さな源兵衛川でもその生態系の変化は激しい。まして人の社会は。そしてそんな小さな川にかかかわることが巡り巡って、金銭では得られない、生きていてよかったという感慨をもたらす。

 多木浩二中村雄二郎『終末への予感  欲望・歴史・記号』平凡社1988年初版、つづき。

《 多木──抽象というのはこうした動きがいろいろにまじりあったもので、あまり単純化できません。しかし、もうあの視線の優位というものがなくなったときに生じてきた表現形式だと思います。 》 126頁

《 多木──芸術のもっとも大きな機能は、いわばエクスタシーの実現で、それを通じて、固まった意識をもう一度カオス化することでしょう。というのはそれが、生命というものであるからですね。 》 134頁

《 中村──いちばん望ましいのは、いいかげんな情報じゃなくて、しかもそういう気持ちを満足させる言葉が使われることですね。
  多木──それが芸術の基盤だと思いますね。
  中村──そこへいかねばだめででょう。
  多木──文学の言語っていうのはそういう言語だと。
  中村──それが本当の意味のレトリックというものだしね。 》 238-239頁

 ブックオフ長泉店へ本を売る。390円。二冊買う。東川篤哉『学ばない探偵たちの学園』光文社文庫2009年初版、ジェイムズ・ジョイス『ダブリナーズ』新潮文庫2010年2刷、計210円。
 ブックオフ沼津リコー通り店へ足を伸ばす。岩城宏之『音の影』文藝春秋2004年初版帯付、上田早夕里『ショコラティエの勲章』東京創元社2008年初版帯付、川端康成『水晶幻想│禽獣』講談社文芸文庫1992年初版、都筑道夫・編『漢字面白事典』主婦と生活社TODAY BOOKS 1996年初版、計420円。

 玄関ドアの鍵が半壊。外側からは普通に開く(閉まる)けれど、内側からはノブが空回りして開かない。裏口から出て外から開ける。閉めると内側からは開かない。ショートショートでありそうな。

 ネットのうなずき。

《 3年くらいでは到底「風化」しないもの─ 放射性物質。 》 椹木 野衣

《 あまり良くないことだが、社会にはゴーストライターというのがいる。
  あまり良くないことだが、社会には自分を粉飾する人もいる。
  でも、それを見破って報道しないのが報道機関の力と見識だ。 》 武田邦彦

《 先日、神戸六甲で買った種村季弘『食物漫遊記』(ちくま文庫、一九八五年)がめっぽう面白かったので、ちょっとした種村風が巻き起こった。これまであまり種村本を読んだことがなかったのは、どうももうひとつピンとこないところがあったためである。『食物漫遊記』は文句なしの傑作、食味随筆として個人的なベスト5に入れることにした。 》 daily-sumus2