昨日の吉田篤弘『水晶萬年筆』には「影」がいろいろな場面に出ていた。 きょうになって気づいた、山崎ハコの歌「影が見えない」(『飛・び・ま・ す』1975年収録)。山崎ハコ作詞作曲。
《 あの日の私はどこ行った
あの日の愛はどこ行った
影が見えない 》
LPレコードをかける。十七歳の声が切々と迫る。なんといふ歌。
題名に惹かれて購入した最相葉月(さいしょう・はづき)『なんといふ空』 中公文庫2004年初版を読んだ。随筆集、いやエッセイ集か。昨日の吉田篤弘 『水晶萬年筆』は小説集だった。同じようにいい文章だけれど、エッセイと 小説、どこが違うのだろう。中公文庫で続けて読んだので、そんなことに 考えが及んだ。先達がいろいろ論じているので、ここは軽〜く私的な直感的 仮説で。小説は第三者(虚構)の演出、エッセイは当人の演出。
編集の妙を感じるつくりだ。最初から順繰りに読めば起承転結、着地が 決まる。文章は枝葉がなくスッキリしている。「旨いけど」の冒頭一行。
《 やってみたら旨かった、というものがある。 》
途中の一文。
《 それにしても油揚げって、なんて素晴らしい食べ物なんだろう。 冷蔵庫から切らしたことはまずない。献立に迷うときの救世主だ。 》
小気味のいい文章。平松洋子を連想。『平松洋子の台所』新潮文庫2008年 初版、「野菜を活ける」、冒頭一行。
《 それは、わけぎから始まった。 》
途中の一文。
《 どうしよう、こんなにいっぱい、どこにも入らない。冷蔵庫のなかにも 置き場所がない。つい調子に乗った私が悪かった。 》
同質の言葉のテンポを感じる。他にふさわしい文があると思うが、これが さっと目に留まった。
「本屋へ」にはくすっと苦笑。
《 先週末、高田馬場駅前で古書市が開催されていた。JRから西武線に 乗り換える途中で横断幕が見えたのだ。横目でちらりと見て、立ち止まるな と腹に一瞬力を入れるのだが、駄目だった。ふらふらと吸い寄せられ、 やはり両手で抱えきれないほどの古本を買ってしまった。 》
抱えきれないほど買ったことは、ないなあ。ブックオフ長泉店で三冊。 中島義道『「私」の秘密 哲学的自我論への誘い』講談社選書メチエ 2002年初版、宮本常一『民俗学の旅』講談社学術文庫2010年32刷、同『 ふるさとの生活』同2009年28刷、計一割引291円。
新聞を整理していて目に留まった広告、東海大学出版部『望星』7月号、 特集。
《 乗らずに死ねるか! ──ホントにすごい霊柩車の世界── 》
http://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-04-4910081350740
普通は死ななきゃ乗れないが。
ネットのうなずき。
《 版画作品を初めとして、著作物や刊本作品など、当初から
販売を前提としている作品は、年月が経った後、古書店などで
入手できる可能性が高いが、こうした「販売されたものではなく、
会に出席することで入手できる無償の摺り物」は、後日の入手が難しい。 》 田中栞
沼津市の某お食事会で使われる、友だちの手描きのランチョンマット。 私も持ってない。
ネットの見聞。
《 確かな技術という以上に、ことばのセンスがすばらしい。 》 岡崎武志
最相葉月、平松洋子を連想。美術でも私の重視するのは先ずセンス。
ネットの拾いもの。
《 「! 、5、A、G、H、J、K、R、S 、W、し、ん、愛、花、海、階、 角、鬼、橋、錦、空、穴、刻、黒、魂、手、術、瞬、瞬、盾、書、女、傷、蝕、 神、人、粋、雪、線、線、窓、蝶、蝶、辻、田、答、道、毒、白、箱、飯、母、 妹、無、杢、夜、欲、乱、旅、凛、弩、瘤、絆、聲、蛻、蝮、噓、々」
さてこれ何だと思います? 実はこれらの一文字、全て書名です。これら の本のほとんどが2010年以降に刊行された本なので、遡ればもっと大量に出て くるはずです。 》 版元ドットコム
http://www.hanmoto.com/diary/2014/06/18/716/?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter