奥泉光『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』文藝春秋2011年初版を読んだ。 中篇三篇を収録。東大阪から千葉県の最低ランクの四年制大学に引き抜かれた桑潟 幸一准教授。彼に劣らず我執にとらわれた教授、准教授たち。苦笑を通り越して あきれる。
《 転んでもただでは起きぬ、を超えて、カネを拾うまでは絶対に起きぬをモットー とする鯨谷氏は、捲土重来、臥薪嘗胆を心に誓い、まずは日本文化学科を己の覇業の 根城とすると胆を決めた。その第一歩が今回の人事であった。
どんなに実績があって優秀な人も、薄バカに近いボンクラも、学部長や学長の 選挙となれば同じ一票である。この事実を、民主主義には否定的な見解を抱く鯨谷 氏も深く理解しており、であるならば、メンドーな利口者より、御し易いバカの 方が勝手がいい。 》 13頁
御し易いバカ=桑潟幸一。カバー(ジャケット)には痩身のカッコイイ男、 桑潟幸一と若い女性たち。本文では。
《 はだけてスイカみたいなまるい腹を見せようか。甲虫の幼虫みたいに白い ぽってり腹を見せようか。 》 88頁
中年肥りじゃん。絵にだまされた。
《 「シルビア」の隣には寿司屋があった。暖簾を潜って、カウンターに座って 覗いた硝子ケースは寂れきって、元気のない鰯や色の悪い蛸の脚が、時化あとの 浜辺みたいにころがっている。と思ったら、奥から出てきた親父はさらに元気が なく、ひなたに三日放置した鯖みたいに顔色が悪かった。とりあえず麦酒を頼み、 烏賊を握ってもらって喰おうとしたら、つまんだ飯がぽろぽろと崩れた。おそろしく まとまりの悪い鮨であり、おそろしく指に力のない寿司屋であった。他に客が来る 気配はなく、落ち着けることは落ち着けたのだけれど、崩れ鮨のわりには詐欺かと 思うほど勘定が高く、二度と行く気になれなかった。 》 118頁
詐欺。それは表紙だろ。
《 桑幸の自己評価は巨木のごとくブレがなかった。というより、知的に後退すれば するほど、無能ぶりが露呈する場面が重なれば重なるほど、本当の自分は凄いのだと する、根拠のない確信の家畜は肥え太り、妄想の花園で花々が絢爛と咲き誇るのだっ た。 》 226頁
《 桑幸の自己評価の樹は、なお高く天空に聳えていた。けれども樹の根はすでに 腐っているのかもしれなかった。 》 227頁
まるでダメ男じゃん。というか饒舌なオヤジのギャグにいささか凝り過ぎで辟易。
朝から午後三時過ぎまで、百人余りの親子の源兵衛川のごみ拾いと生き物研究の お手伝い。無事終了。ほっ。
ネットの見聞。
《 世界での対日評価下がる。過去、日本への高い評価は「平和国家」。因みに 一位独、2位加。 … BBC調査。本年は日本5位。日本は、06年、07年、08年、 12年と計4回も「世界一」、何故今落ちたか。平和国家から逸脱。安倍批判だ。 》 孫崎享
《 中国の外語大、日本からの留学生が減っている分、アラブやアフリカの人が増加。 あちらの通信インフラは中国がやっているとの事。中国は中東・アフリカと太いパイプ を作っている。日本、これで最後の頼みのアメリカの逆鱗に触れて梯子を外されたら 世界中に友達は北朝鮮だけという、いつか見た景色が…。 》 安田登
ネットの拾いもの。
《 いま、日本でリュウタロウ、と言えば、
元首相の橋本龍太郎ではなく、野々宮竜太郎の方だな。
そして、安倍首相の次に有名な政治家(?!)だろうて。
そろって、クールジャパンから、フールジャパンへの象徴だな。 》