『 詩話・近代ふらんす秀詩鈔 』6

 齋藤磯雄『詩話・近代ふらんす秀詩鈔』第六章はアルチュウル・ランボオ。「酔ひどれ船」二十五節、 百行の詩を分析。これまた深い、深すぎて……。

《 「酔ひどれ船」はランボオの韻文のうち最も重要なものであり、象徴派から超現実派に至るあらゆる 詩人に測り知れぬ影響を与へた作品である。 》

 その一節。

《  電光放つ星辰の火花に染みて、馳せしわれ、
   黒き海馬を従へて、物に狂へる板子かな、
   時しもあれや七月は、丸太棒(まるたんぼう)の滅多打ち、
   燃ゆる漏斗の形せる碧瑠璃の空をぶちのめす。  》

 粟津則雄の訳。

《  火と燃える漏斗の開く群青の大空を、
   七月が棍棒でなぐり倒していたときも、
   電気仕掛の衛星の光におれは身を染めて、
   黒い海馬をともにつれ、狂おしい板子となって駆けたのだ。  》

《 酔いどれ船とは、ランボー自身である。 》 粟津則雄

《 この詩に於て、語つてゐるのは「船」自身である。 》 齋藤磯雄

《 「酔ひどれ船」は、体験の詩ではなく、予見の詩である。 》

《 ランボオは正統のカトリックではなく、況や狂人でも病人でもなかつた。ただ彼は、殆ど 非人間的であつた。そして、その作品を書いた神秘的な数年間、文字通り、超人的な力、 未知のデモンに憑かれてゐたのである。 》

  ヴァルモオル夫人 1786-1859
  ネルヴァル      1808-1855
  ボオドレエル     1821-1867
  マラルメ        1842-1898
  ヴェルレエヌ     1844-1896
  ランボオ        1854-1891

 『詩話・近代ふらんす秀詩鈔』を読了。堪能……翻訳詩は理解し難いことをあらためて実感。 「後記」結びから。

《 今、立風書房の厚志により、新たに五号活字大型清雅本として上木されるに際して、旧版に補正を加え、 かつ魯魚の誤を訂し得た。敗戦日本最大の後遺症を免れ、正漢字正仮名遣を用ゐ得たこともまた感謝に 堪へない。 》

 このパソコンでは正漢字は無理。「魯魚の誤を訂し得た」ようだが、不注意による誤植が見られた。 それは些細なこと、なによりもじっくり読む醍醐味を味わえたことが嬉しい。これが一時間で読めるか。

 ネットの見聞。

《 現代人は人類史上初めて孤独や退屈を感じずに暮らせるようになった。しかし人間として基本的な何かを 失ったのではないだろうか? 》 シェリー・タークル「ネット化された霊長類」

 ネットの拾いもの。

《 スタジオ・ジビエ作品では『風の谷のナウ鹿』も美味しい、いや面白いですね。 》

《 娘の小学校の新入生名簿の端っこに、「誠に申し訳ありませんがパソコンのJIS規格上 どうしてもでてこない文字は近い文字を活用しました。」 》