『現代芸術の地平』三

 市川浩『現代芸術の地平』岩波書店1985年初版、「可能的世界による発見──想像から知覚へ」1967年発表を読んだ。

《 芸術は、われわれが実用という限定から解放され、自由な仕方で世界とかかわり、可能的世界での受肉を実現する 形式である。したがって芸術のうちに、〈世界の表現〉と〈主観性の表現〉と〈表現形式そのものの内的秩序〉という 三つの極へむかうヴェクトルがみとめられるのは当然であろう。それは三角形の三つの頂点のいずれか一つの方向へと 三角形がのびていったとしても、三角形であることを失わないようなものである。 》 80-81頁

《 これはまた芸術家が、芸術言語の三つの機能、すなわち対象を〈示す〉機能と、自己の主観性を〈表す〉機能と、 受け手の反応を〈喚びおこす〉機能のうち、どの機能を重視したかということとも関係している。 》 81頁

《 芸術家は、対象と自己の主観性と作品の内的秩序という三つのヴェクトルに身をゆだねつつ、制作の行為のなかで それらを生き、現実世界に対峙しうる虚構空間を創造する。 》 87頁

《 こうして創造された作品は、それを構成する芸術言語が作者にたいして外在的である以上、作者の主観性をはなれて 独自の歩みをはじめる。 》 88頁

《 かつてのように、創作の出発点は現実にあり、探求ないし創造のはてに作品があるのではない。むしろはじめに 作品が仮構され、探求ないし創造のはてに現実が発見されるのである。〈知覚から想像的世界へ〉ではなく、〈想像から 知覚的世界へ〉というこの転倒した形式は、知覚が歴史と状況のうちにあまりにも深く根を下ろし、がんじがらめに しばられていることを意識せざるをえない現代では、むしろ発見的であせあるだろう。じっさい現代の作家は、〈想像から 知覚へ〉を出発点として選びながら、その途上で〈知覚から想像へ〉の回路を再発見して驚くのである。 》 89頁

 以上三回にわたって書いてきたものは、『現代美術の地平』の第一章と第二章。芸術論総論に当たる。いくつもの芸術論を 読んできたが、この本が最も納得でき、腑に落ちた。これらが四十年前五十年前に書かれていたことに驚く。一編は読んだ 気がするが、それを収録した本はとっくに処分していた。当時の私には理解できなかったようだ。だよなあ。

 風が弱い午後、自転車でブックオフ長泉店へ。気になった本があったが、今日は見送り、直帰。寒い寒い。

 ネットの見聞。

《 実際のところ、五輪を「目的」として開催する意味は、現政権にはない。事実は逆で、五輪のおかげで、アレも出来る、 コレも出来る(共謀罪も)というのが、最初からの算段だろう。例えば、改憲に際して、スポーツ界や開会式がらみの アーティストなどからの政権批判を抑制できる、とか。 》 平野啓一郎
 https://twitter.com/hiranok/status/819480560720494592

《 共謀罪で私が恐れる事がありましてね。捜査機関も着手されてもない犯罪を捜査するなんてたまったもんじゃないと 思うんですよ。かなり難しい事ですからね。そうなると、共謀罪専従の捜査班が作られてしまうのではないか。 過去の日本はそういうものを経験してますからね。これを特別高等警察と言うので。 》 松井計
 https://twitter.com/matsuikei/status/819846885963808768

《 源ちゃんとのお話の中心は天皇天皇の威信は全国民代表し、いかなる党派にも与しないという「政治的正しさ」 に基礎づけられています。この「全国民」という(空疎な)観念が空語にならないでいるのは、陛下がそこに「死者たち」 を含めているからでは、という話になりました。 》 内田樹
 https://twitter.com/levinassien/status/820217645043593216

 ネットの拾いもの。

《 真面目な話、榊原良子さんがもし選挙に出たとして、選挙カーの上から「我らは辺境の国々を統合し、 この地に王道楽土を建設するために来た。そなたたちは滅びに瀕している。我らに従い、我が事業に参加せよ!」 って言われたら、政策の中身ほとんど見ずに一票入れてしまうかもしれん。 》 たられば
 https://twitter.com/tarareba722/status/819890437687152641

《 「患者を番号で呼び出さないでほしい。病院は人間を相手にしているということを忘れていないか」

  「患者を名前で呼び出さないでほしい。プライバシーを尊重して欲しい」

  当院のこの二つの投書を並べて掲示したい。 》 いちは
 https://twitter.com/Willway_ER/status/820060719563476992

《 「日本橋本町」
  江戸っ子「にほんばしほんちょう」
  浪速っ子「にっぽんばし、ほんまち」
  田舎の子「にほん はしもとちょう」 》 猟奇の鉄人
 https://twitter.com/kashibaTIM/status/820163044625874944

《 『愛の怪談』 ¥1,080  文=立原えりか/絵=牧村慶子、サンリオ出版、1974  キリン書房 》  日本の古本屋

 『愛の怪談』。怖そう。『愛の階段』なら持っている。沼津市芹沢光治良記念館で牧村慶子展、開催中。
 http://www.city.numazu.shizuoka.jp/kurashi/shisetsu/serizawa/tenji/index.htm